ビャン大使に聞きました!ビャンビャン麺の楽しみ方

ビャン大使とは、ビャンビャン麺が手軽に食べられるようになることをゆるく目指し、活動している民間の任意大使である。基本的な活動は、ビャンビャン麺を食べ歩く「ビャン活」だ。

話を聞いたのは、ビャン大使ことメグミさん。彼女とビャンビャン麺の出合いは2017年11月「山西亭」での特別宴会。おいしいだけでなく、全57画(56画、58画とする説もある)という複雑な漢字を持つ唯一無二の麺だと知り、好奇心が止まらなくなってしまったという。

「ビャン大使」のメグミさん(左)と、「ビャン大使」の名付け親で、「中華地方菜研究会〜旅するように中華を食べ歩こう〜」を主宰する本多政子さん(右)。「山西亭」の会も本多さんが企画した。

偶然にもその年末、ビャンビャン麺発祥の地・西安への旅行を計画していたこともあり、年末年始はビャンビャン麺三昧。兵馬俑を見学して街へ出ると、そこにはビャンビャン麺店が立ち並ぶ小吃街。本場で洗礼を受け、高まった気持ちを友人に熱く語ったところ、友人から「ビャン大使」に任命されたという。

兵馬俑博物館を出ると、そこは「ビャン通り」だった。
西安最大の観光地でビャン推し。漢字のインパクトが外国人を惹きつける。

ビャンビャン麺の楽しみ方①「ビャン活」でいろんな店を食べ歩く

ビャン大使曰く「同じように見えても、店ごとに全然味や食感が違う」のがビャンビャン麺の魅力。そのため、定番となる油潑(ヨウポー)を食べ歩けば、比較がしやすく、好みの味や食感を見つけやすくなるという。

西安の街場のビャンビャン麺。ド定番の食べ方は、こちらの油潑(ヨウポー)。
西安の街場の店で、トマトと卵の炒めものと、腊汁肉(豚肉をとろとろに煮込んだもの)のあいがけビャンビャン麺。しかし、ビャンビャン麺は混ぜて食べる麺なので、この後あいがけはしない方がいいことに気づく。それもまた学びである。
横浜中華街「蘭州牛肉拉麺 東珍味小籠包」のビャンビャン麺の看板。一緒に記念撮影をしてしまうあたり、ビャン大使らしい。

ビャンビャン麺の楽しみ方②「ビャン都物語」巡り

また、ビャン大使が理想とするのは「当たり前のようにビャンビャン麺が食されている場がある」ことだ。例えば、奈良市北西部・学園前駅そばの西安料理店「王楽園」もそのひとつ。「ここはマニアックなお客さんが集うのではなく、市井の人が町の中華屋さんでふつうにビャンビャン麺を食べているところがいいんです」。

奈良・学園前に店を構える「王楽園」のビャンビャン麺。味付けは油溌(ようぽー)一択で、1碗1000円。大は1200円という潔さ。

そして奈良から足を延ばせば、大阪の「朋友雑穀食府」にもビャンビャン麺があり、気軽に親しまれていたという。

そこでビャン大使が閃いたのは『ビャン都物語』。本家『三都物語』は京都・大阪・神戸だが、もう1店舗関西でビャンビャン麺を出す店があれば、『ビャン都物語』の最後のピースがはまる。こうしたテーマやロマンを抱いて活動することも「ビャン活」の励みになるという(京都か神戸の情報をお待ちしております)。

大阪「朋友雑穀食府」は、店名の「朋友」以上にビャンビャン麺の看板が目立っている。

ビャンビャン麺の楽しみ方③海外に「遣ビャン使」を派遣する

そして「ビャン活」の輪は世界にも広がる。しかし思い立ってすぐに外国には飛べるわけではない。そこで始まったのが、誰かが海外旅行に行くついでに、現地のビャンビャン麺を食べてきてもらう「遣唐使」ならぬ「遣ビャン使」である。

ちなみに最初の「遣ビャン使」はアメリカ・ニューヨークのチャイナタウンへ飛んだ。写真の「Xi’an Famous Foods」は店内で麺を手打ちしており、定番の油潑をはじめ、いくつかの味付けでビャンビャン麺が食べられる。帰国後、遣ビャン使の話を聞くのもビャン大使の楽しみだという。

ニューヨークに店舗展開する「xi’an famous foods」。外観は完全にニューヨーク(だと思う)。
オーダーしたのはSpicy Hot-Oil Seared Hand-Ripped Noodles、つまり油溌麺(ようぽーめん)だ。

もちろん、自身が諸外国を訪れる際にも、ビャンビャン麺を出す店をチェックしてから出かけていると。香港の店では、何種類も餃子入りの麺があるのがユニーク。ワンタンメンの感覚なのだろうか。

香港のビャンビャン麺店のメニュー。価格は1杯600円~900円くらいだ。
全員がビャンTでキメていた。これを受け、ビャン大使はビャン活仲間とともに揃いのビャンTを作ることにしたという。

ちなみに、今後の「遣ビャン使」は、ロンドンとシンガポールへの派遣を検討中。グローバルな「ビャン活」によって、世界に広がるビャンビャン麺の輪を感じることができそうだ。

ビャンビャン麺の楽しみ方④中国人を和ませる

さらにビャン大使には、ビャンの字を書いて窮地を救ったエピソードがあるという。

「かつて、ある中国人女性の心を開く必要がありました。ところが、彼女がなかなか心を開いてくれません。聞くと彼女は河南省の出。河南省を代表する麺といえば烩麺(ホイミィェン)でしょう。その話をしたら、彼女は初めてにっこりと口元を緩ませたんです。

そしてそのあとが『ビャン』の出番です。『河南省の隣の陝西省にビャンビャン麺ってあるよね。この字書ける?』と。もちろん、普通は書けません。私がスラスラと書いて見せたら、彼女が驚いたのなんの。一気に場の雰囲気が変わりました。この字を書けると、中国人にも一目置いてもらえますよ」

ビャン大使の書いたビャン(右)と、編集部コスギが書いたビャン(左)。難しそうに見えますが、慣れれば簡単とか。

目指すはカップめん。ビャンビャン麺の大衆化

それにしても、メグミさんはなぜこれほどまでにビャンビャン麺にはまってしまったのか。その理由は、一にも二にもこの「漢字」。「もし、ビャンビャン麺が『ベルト麺』という名前で紹介されていたたら、きっとここまで興味を持てなかったでしょうね」。

また、「ビャン活」「ビャン都物語」「遣ビャン使」とネーミングで活動をさらに明るく楽しくしているのは彼女の才能。そんなビャン大使の密かな野望は「カップめんとしてインスタントビャンビャン麺が発売され、よりビャンビャン麺が身近になること」だそうだ。

ちなみに中国では、すでに乾麺タイプのビャンビャン麺が発売されている。日本の製麺技術でどこまでヘラッ、もちっとした幅広麺を再現できるのか。そこはメーカー各社に期待したい。

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