台湾旅行の魅力のひとつが、バラエティ豊かな朝ごはん。今回ご紹介する蛋餅(ダンビン:dànbǐng)は、そんな台湾の朝ごはんの代表選手です。葱油餅や鹹豆漿(シェンドウジャン:温かな豆乳に酢をたらし、ゆるく固めたもの)ほど日本では広まっていないため、食べられる場所を見つけると嬉しくなります。

蛋餅とは、小麦粉や片栗粉で作った生地と卵を重ねて薄く焼き、くるくると巻いて、辛いたれや醤油だれなどをかけて食べる軽食のこと。シンプルに卵だけのものもあれば、ツナ、とうもろこし、チーズなどの具を一緒に巻くものもあり、バラエティ豊かです。

日本では「台湾クレープ」「台湾トルティーヤ」といった名前で紹介されているのを見たことがある方もいるのではないでしょうか。

蛋餅の歴史ーもちもち系の生地は台湾独自に進化した!?

そんな蛋餅は、中国大陸から1949年以降に国民党とともに台湾に渡ってきた食べものです。事実、中国大陸にも、蛋餅と似たような鶏蛋餅(ジーダンビン:jīdànbǐng ※鶏蛋=鶏卵)や鶏蛋餅巻(鶏蛋餅の中に具を巻いたもの)と呼ばれる軽食がありますが、大陸との違いはその食感。台湾の蛋餅にはもちもちとしたものが多く、独自に進化したのではないかと思われます

『富麗華』の鶏蛋餅。コロナ前は、夏の「新一の橋まつり」で鶏蛋餅を焼くのが毎年恒例。またこの屋台が見られる日が待ち遠しい!photo by Takako Sato

とはいえ、台湾にもパリパリの蛋餅もあれば、サクサクもあり、もちもちした食感もあるので、正解は“どれもあり”!です。さらに、お店によってタレの味わいが異なるのも、蛋餅を食べる楽しみとなります。

サクッとした麵皮か、もちもちの粉漿か? 生地で異なる蛋餅の食感

そんな台湾の蛋餅は、大きく分けて2種類の生地があります。まずひとつが、もちもちとした食感が魅力の粉漿蛋餅(フェンジァンダンビン:fěnjiāngdànbǐng)です。

これはホットケーキやクレープに似た作り方で、生地は小麦粉やサツマイモでんぷん、片栗粉に水を混ぜてとろっとさせ、フライパンなどに流し、両面を焼いて仕上げた蛋餅のこと。

焼き面はサクッとしているものもありますが、中はもちもちで軟らかな弾力があります。これぞ台湾人の大好きな食感「QQ」または「軟Q」ですね。

『台湾小館 新宿店』の蛋餅。
自作の蛋餅。

そしてもうひとつが、サクッとした生地の餅皮蛋餅(ビンピーダンビン:bǐngpídànbǐng)です。です。

これは簡単に言うと、肉まんや饅頭(マントウ)の生地と一緒で、小麦粉に熱湯などを加えて練り、発酵させた生地を薄く伸ばして焼いた蛋餅のこと。こちらの方が手間がかかる作り方ですが、このタイプは冷凍の蛋餅皮(薄くのばした蛋餅の生地)も販売されていて、家庭でもサッと作れるのが魅力です。

冷凍で販売されている「蛋餅皮」。

また、蛋餅は一般的に鉄板やフライパンで焼いて(=煎)仕上げますが、中には揚げる(=炸)ものもあり、炸蛋餅(ヂャーダンビン:zhàdànbǐng)といいます。揚げるとパリパリ、生地によってはパイ生地のように層ができてサクサクとなり、これもこれでたまりません。

台北出身の友人の話では、台北はパリパリやサクサクの餅皮蛋餅が主流で、モチモチした粉漿蛋餅は中部から南部に多いのだとか。もちろん、台北にも粉漿蛋餅が食べられるお店(例えば『真芳』など)がありますが、知っておくと地域の傾向が掴めますね。

また、「古早味蛋餅」と書いてある店は「モチモチの蛋餅じゃないかな?」と想像できるそう。古早味(台湾語:ゴーザービ:kó͘-chá-bī)とは、懐かしい、伝統的な、という意味のこと。生まれた時代によってこの言葉に抱く感覚が違うかと思いますが、「1970年前後に生まれた人は、だいたい1960~80年をイメージして使う」とのことです。

つまり、すでにもちもちの蛋餅ができあがっていた頃に生まれた人は、子どもの頃からある懐かしい味だということですね。いずれにせよ、台湾における「古早味」というのは、数十年前ぐらいの感覚なのではないかと思います。

さて、そんな「古早味」な蛋餅も含めて、次のページでは東京および近郊で食べられるおすすめのお店をご紹介しましょう。

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