横浜中華街に行ったら、どこで何を食べればいい? 魂が震える本物の味はどこにある…? 当連載は、横浜で美味を求める読者に向けた横浜中華指南。伝統に培われた横浜の味と文化をご紹介します。 ◆目指すゴールとコンセプトはコチラ(1回目の連載)でご覧ください。 |
秋冬になると恋しくなるのが煲仔飯(ボウチャイファン ※広東語読み。以降、料理名カタカナ表記は広東語に準じます)。干し肉や腸詰など、さまざまな具をのせた土鍋炊きごはんで、広東省や香港で愛されている郷土料理です。
作り方は実にシンプル。土鍋に米と水を入れ、米が半煮えになったところで具を投入。土鍋に菜箸をつっこんでぐるぐるっとかき回して、おこげができるまでじっと待つこと25分~40分。仕上げに甘めの醤油ダレをかけ回したらできあがりです。
筆者が初めて食べたのは、広東省江門市にある世界遺産の街・開平。あやしさたっぷりの白タクのおじさんが連れて行ってくれた店だったのですが、これがうまいのなんの。少し焦げた香りとともに、鍋底にできたおこげのパリパリとした食感がたまらず、箸が止まらなくなりました。
目の前で調理の一部始終を見られたことや、旅先の思いがけない出合いに感激し、煲仔飯が大好きになったのは言うまでもありません。
以来、あちこち食べ歩いたのですが、実は横浜中華街で食べる煲仔飯がかなりおいしいんです。いやむしろ、広東省や香港で食べるより、横浜で食べたほうがおいしいかもしれない…。
煲仔飯の具の定番・干し肉や腸詰は横浜産がトップクラス説
では、なぜ横浜で食べたほうが大概おいしいと感じるのか。その理由は二つあります。
まず一つが日本の米です。広東では主に長粒米を使うのですが、香港のグルメの知人は「やっぱりお米は日本のものが抜群においしいんだよね」と言うのです。
そして二つ目は、横浜で手作りされる風肉(フォンヨッ:風干し肉)・臘腸(ラッチョン:腸詰)。横浜の冬は、広東省や香港ほど外気温が上がらず、肉が凍るほど気温が下がらないため、薄味に漬けた肉を干しても、腐らずじっくりと熟成されるという特徴があります。
また、東京湾を渡る北風が、やや湿度を帯びた潮風となって肉や腸詰に吹き付けるのも、風肉や臘腸のおいしさを育む一助に。関東の冬はほぼ雪が降らず、晴天の日も多いため、生まれも育ちも横浜という華僑の料理人は、干し肉(風肉)作りには最高の環境だと話してくれました。
そんな風肉や臘腸は煲仔飯の具の定番。おいしい日本米に、気温、潮風、冬の晴天という3つの良条件に恵まれて作られた風肉や臘腸をのせて炊き上げれば、そりゃあ、おいしくならないわけがないでしょう。
さて、ここからが本題。横浜中華街で煲仔飯をレギュラーメニューに載せているのは、現在筆者の知る限り5店舗。「一楽」など、季節限定メニューとして提供している店もありますが、今回は実食している「南粤美食(なんえつびしょく)」「菜香新館」「美楽一杯新館」をご紹介します。次のページで、めくるめく煲仔飯の世界をお楽しみください。