皆さんは、中華料理店で焼売をオーダーする確率はどのくらいありますか? サイドメニューに頼んでみたら、ガッチガチの皮で妙に固く、味のバランスが悪くてガッカリして以来、遠ざかっている…。そんな方もいるのではないでしょうか。

また、ランチの弁当に入っている冷凍食品の焼売で、「また食べたい!」と強く思う味に出合ったことはありますか? 思えば、焼売は知名度こそ高いものの、餃子のように単独で勝負する店は少なく、永遠の三番手、いや、四番手、五番手に甘んじている状況かもしれません。

では、おいしい焼売とはどんなものなのでしょう。

目を閉じて、想像してみてください。今、あなたは香港にいます。香港の古い茶楼……そうですね、行ったことがあれば、点心がワゴンに積んで運ばれてくる「蓮香楼」あたりを思い浮かべてください。

香港「蓮香楼」の店内。混雑時の人気点心は争奪戦。

あなたは厨房からワゴンが出てくるのを見つめています。近寄って、そのひとつを覗き込むと、おばちゃんがパッと蒸籠を開けました。そこにあるのは、蒸し器から盛大に汗をかいたサウナ上がりのような大きな焼売です。

反射的に「これちょうだい」と注文すると、脂の粒をキラキラ輝かせた焼売が、湯気をまとって目の前へ。

香港「蓮香楼」の牛肉焼売。皮が破けていてもきにしない。私が食べたいのは、こういうパワーのあるシウマイです

形を気にせず作られた、できたての焼売から放たれるオーラは実にパワフル。同じ焼売でも、食品工業の産物として作られた冷凍焼売とはまったく別物です。今回は、そんなシズル感あふれる焼売をご紹介しましょう。

小さくても主役級の存在感!じゅわっとうまみ溢れる「廣東厨房 鴻」の焼売

横浜中華街でおいしいものを食べたいけれど、行列は嫌だという人におすすめしたいのが「廣東厨房 鴻」。店はJR石川町駅の元町口からすぐ、リセンヌ小路にあります。

同店のオーナーシェフは横浜出身で、家業が中華料理店。もともと都内高級ホテルで長く中華部門を守ってきたベテランだけあって、横浜伝統の古い料理と、ホテル仕込みの現代的な料理の両方を作られています。

そんな同店の焼売が、こちら。

大粒のごろっとした焼売が蒸気をまといながら登場。シンプルな材料で肉汁をしっかりと抱き込んでいます。

餡が皮から大きくはみだした様子はまるでキノコの如し。皮の皺を見てください。また、餡に皮を軽やかにまとわせており、見るからに軟らかそうです。

口にすると、ふわっとした餡が抱き込んだ肉汁と、乾物の旨味がじゅわっ。餡には食感のアクセントとなる歯ごたえもあり、長い余韻も楽しめます。

こんな焼売に醤油をどっぷりつけたら野暮というもの。芥子はお好みですが、肉の臭みを感じないのでなくても問題なし。つけるなら、ふた口目以降にするのがよいでしょう。

こちらは小さい店なので、週末は17時30分の開店と同時にお客さんが次々と入り、18時には満席になることが多いよう。

素材のうまみを生かし、クリアで上品な味付けの料理を出されるかと思えば、蝦醤など癖の強い調味料も使いこなし、複雑玄妙な異国の味わいも表現されていますが、筆者が特にお気に入りなのは焼きそばと焼売。ぜひお試しください。

イベリコ豚の蝦醤風味炒め。豚肉は断面がロゼ色。風味の強いイベリコ豚を、これまた風味の強い蝦醤でまとめ、うまみを倍増させています。

素通りできない!「鳳林」の「自家製ジャンボシュウマイ」はド迫力のダイナマイトボディ

横浜中華街の中で焼売を食べるなら、筆者のイチ押しは関帝廟通りの「鳳林」です。

名物「自家製ジャンボシュウマイ」は、肉がギュッと詰まってぷりっとした食感。肉感的なビジュアルとは裏腹に、軽やかな味付けであり、後味は軽く上品です。

見慣れた焼売よりも明らかに大きく、お土産パックを手にすれば、想像以上にずっしりとしています。

同店は「味も雰囲気も唯一無二!こだわりの焼きそば3選」でご紹介した「貝焼きそば」の名店。昼に行くと、なぜかみんなメニューにはないカレーを食べていたり、そうかと思えばいつも大きなフカヒレを用意していたりと、懐の深い店でもあります。

また、焼売だけでなく、手づくりの肉まんやマーライコー(馬拉糕)などお土産も充実しているので、他で食事をしても、つい足が向かってしまうのがこの店。

なかでも今の季節、是非試してほしいのは、冬季限定「カシューナッツの飴炊き」。食べ始めると止まらない、横浜中華街の隠れた名品です。

「鳳林」のカシューナッツの飴炊き。実に中毒性があり、我が家では「飲み物」と呼ばれています。

ストロングスタイル!げんこつシュウマイの愛称で親しまれる「海員閣」の「燒賣(シューマイ)」 

横浜中華街の中でもうひとつおすすめしたいのが「海員閣」の「燒賣(シューマイ)」です。

三代目に代替わりして、ますます旨くなったと店の勢いは増すばかり。焼売は毎朝店で包まれており、昼には全部売り切れるほどの人気です。

開店前の11時30分に並び、1時間待ちはザラ。大人気店です。

こちらは、握った手の跡をそのまま残したかのような横長のフォルム。皮からはみ出る圧倒的な肉感から、「げんこつシュウマイ」の愛称でも親しまれています。

豪快なフォルムの「海員閣」の燒賣(シューマイ)。

これを湯気が冷める前にがぶっと齧れば、「おお、肉だ、自分は今、肉汁と肉の説得力を感じる男メシを食べているんだ」という雄々しい気持ちが沸々と。

名物の「豚バラそば」をすすりながら、ごっつい焼売をやっつければ、もう思い残すことはありません。戦い終わった気分で店を後にし、よたよたと駅に向かうだけです。

焼売はお土産もあり。これを買えば翌日のお弁当はばっちりです。

裏中華街・蒔田の老舗「廣東楼」の「特製しゅうまい」は食べてびっくり、シャクッと軽やか

焼きそばの回で、裏中華街にある自家製麺の名店として紹介した「廣東楼」。こちらの「特製しゅうまい」も、遠路はるばる食べにいく価値があります。

特徴は、クワイのシャキッとした歯ざわり。香港や広東省の飲茶で楽しめる牛肉団子にクワイが入っていることがあるので、香港出身のチーフのアレンジか、それとも創業時からのメニューなのか。てっぺんが黄色いビジュアルも香港を彷彿とさせます。

「廣東楼」の特製しゅうまい。

しかし、現地のパワフルな焼売ではなく、やさしいうまみの餡が詰まった上品な味わいは、横浜オールド中華ならでは。この、白く美しい焼売に醤油をベタッとつけるのは野暮というもの。芥子をちょっぴりか、お酢を一滴くらいがよいでしょう。

また、この店でホールを守るオーナー、上品なお母さんと何気ない会話を交わすと、いつも豊かな気持ちになります。

筆者は古い広東料理について調べたいとき、博識なオーナーに質問しに行きますが、横浜中華街の昔の話など伺いながら食べる夕食は一人でも大満足。

「廣東楼」店内。

思えば30年ちょっと前、今のように食べ放題でギラギラしていなかった頃の横浜中華街は、ホールのお母さんとの会話も含めて「廣東楼」のような雰囲気の店がたくさんありました。

少し暗めの落ち着いた照明に、異国情緒と和風が混在した内装。オールド中華ファンなら行っておきたい、横浜の知られざる名店です。

お土産用焼売もおすすめ!
ご紹介した4店舗のうち、「鳳林」「海員閣」「廣東楼」では、お持ち帰り用の焼売も販売しています。お店で食べられなかったら、お土産を狙ってみては。

 

文中でご紹介したお店

廣東厨房 鴻
住所:神奈川県横浜市中区石川町1-13-12(MAP
TEL:045-264-9861
営業時間:11:30~14:00 17:30~22:00L.O.
水曜定休

鳳林
住所:横浜市中区山下町187(MAP
TEL:045-662-2225
営業時間:11:00~21:00 ※平日は中休みあり
水曜定休
★お土産用焼売あります。

海員閣
住所:横浜市中区山下町147(MAP
TEL:045-681-2374
営業時間:11:40~15:00(14:00L.O.)※売切れ次第終了なのでお早目に
月曜定休(祝日の場合振替あり)
★お土産用焼売あります。

廣東楼
住所:神奈川県横浜市南区榎町2−62(MAP
TEL:045-731-2021
営業時間:11:00~20:45
火曜定休
★お土産用焼売あります。


text & photo:ぴーたん
ライフワークのアジア樹林文化の研究の一環として、台湾・中国・ベトナム・マレーシアを回って飲食文化も研究。10数年前の勤務先で、江西省井岡山に片道切符で送り込まれたことを機に、中国料理の魅力に目覚め、会社を辞めて北京に自費留学。帰国後もオーセンティックな中国料理を求めて、横浜をはじめ、アジア各国の華僑と美味しいものについて情報交換をしている。

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