ここ数年、日本では魯肉飯の知名度がうなぎのぼり。台湾料理店でなくてもランチで見かけるようになりました。一方、台湾ではよく知られているのに、日本であまり知名度がないごはんものが鶏肉飯(雞肉飯|ジーロウファン|北京語:jīròufàn|台湾語:ke-bah-pn̄g)です。

こういってはなんですが、見た目はかなり地味な鶏肉飯。しかし、ひと口食べてみると、予想外に「美味しい…!」が押し寄せてきます。

しっとりと火を入れた鶏肉に、油葱酥 (ヨウツォンスー|yóucōngsū|揚げエシャロット)と、鶏油の効いたタレがかかった鶏肉は、香ばしく、それでいてしつこくなく、一度この味を知ったらまた食べたくなってしまうはず。

同じ台湾のごはんものでも、豚肉を使った魯肉飯はこってりしていますが、鶏肉飯は比較的あっさりしているので罪悪感がなくていいですね。

台北晴光市場「嘉義雞肉飯」の鶏肉飯(写真提供:mitsuko|2023年撮影)

鶏肉飯は細かく分けると、肉をそぎ切りにした鶏片飯(ジーピィェンファン)や、細長く裂いた鶏絲飯(ジースーファン)など、肉の形状によって、台湾では名前が分かれていることが多いです。

ちなみに、日本で見かけるもののほとんどは、鶏を細長く裂いた鶏絲飯。また、魯肉飯と同じく、台湾ではごはん茶碗くらいの小碗で提供されますが、日本では一食分のボリュームが求められるため、どんぶりサイズのものが多くなっています。

面鳥の火鶏肉飯が定番!鶏肉飯発祥の地・嘉義

鶏肉飯発祥の地は台湾南部、台南市の北隣に位置する嘉義市です。誕生のきっかけは、第二次大戦後の食糧難の際、アメリカ軍が本国から七面鳥の肉を持ち込み、七面鳥の肉に魯肉飯の汁をかけてみたら美味しかったので、売り出したとか。

発祥の店は、嘉義駅の近くにある「噴水雞肉飯」。それが今や、嘉義市内に百数十軒の鶏肉飯屋さんがあるのですから驚きです。

鶏肉飯発祥の店といわれる「噴水雞肉飯」本店。嘉義駅の近くにあります。
「噴水雞肉飯」の「雞絲飯」。店では火雞絲飯とは書いていませんが、ここでも七面鳥を使っています。

また、嘉義の鶏肉飯は鶏肉でなく、七面鳥の肉が基本。七面鳥の肉を使っている場合、火鶏肉飯と「火」の字が入ることが多いです。ちなみに台北など他の地域では、七面鳥のところもあれば鶏肉のところもあります。

台湾料理のプロおすすめ!嘉義&台南で好きな鶏肉飯の店を聞いてみた。

嘉義は鶏肉飯の食べ歩きができるほど、多くの鶏肉飯専門店がありますが、いったいどこで食べればいいのでしょう。次のページでご紹介する台湾料理店や台湾カフェの店主に、おすすめの店をうかがいました。

まず、箱根小涌谷の「HAKONE PICNIC 台湾カフェ」オーナー夫妻は、「嘉義公園火雞肉飯」が嘉義で最も好きなお店だそう。

嘉義にある「嘉義公園火雞肉飯」。

こちらは嘉義の鶏肉飯激戦区から距離があるものの、常に行列ができている人気店。火雞肉飯の上にのった、油葱酥のパリッとした食感がたまらないとか。テイクアウトして、すぐ近くにある檜意森活村(日本統治時代の建物群)で食べるのもおすすめだそう。

「嘉義公園火雞肉飯」の「火雞肉飯」。写真はテイクアウト用。(写真提供:HAKONE PICNIC 台湾カフェ)

また、台南にある「台南阿偉火雞肉飯」は、旦那さまが大学生時代に週1~2回通っていた学生街の名店。ここではトッピングの半熟卵焼きがマスト。黄身をくずしながら混ぜて食べるのが最高!と教えてくれました。

「台南阿偉火雞肉飯」の火雞肉飯。(写真提供:HAKONE PICNIC 台湾カフェ)

西新宿にある「台湾佐記麺線」オーナーの佐久間さんは、「民主火鶏肉飯」がおすすめ。ここは鶏肉の「しっとり感が素晴らしい」とイチ推し。台湾旅行で嘉義方面に行く予定があれば、せっかくですから七面鳥を使った火鶏肉飯の食べ比べもいいですね。

次のページでは、東京や都内近郊で楽しめる鶏肉飯をご紹介します。

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