3:毛沢東ゆかりの名菜も外せない!主席の愛した料理とは?

湖南省といえばあの毛沢東の出身地。省都・長沙の南西にある湘潭市韶山に産まれた毛沢東は、故郷を離れ、長沙へ出てきた学生時代に食べたものを、のちまで長く愛し続けました。その代表的な品はこちらです。

醤油は不要!毛沢東の愛した豚の角煮「毛氏紅焼肉」

その名もずばり、毛沢東の豚の角煮。毛家紅焼肉(マオジャーホンシャオロウ:毛家红烧肉)とも呼ばれるこの料理には、おもしろいエピソードがあります。

毛家紅焼肉(毛家红烧肉)

学生時代の毛沢東は、毎週末に同級生と肉料理を食べており、醤油味でじっくり煮込まれた豚の角煮・紅焼肉(ホンシャオロウ:红烧肉)に惚れ込んでいました。

艶やかに輝く、皮・脂・肉の三層がくっきり美しい豚バラ肉の煮込みはすっかり彼のお気に入り。しかし、ある視察先の醤油工場の衛生環境が芳しくなかったことから、自身が口にする料理に醤油が使われていると嫌がるようになります。

そこで北京へ拠点を移した毛沢東のために、中南海の料理人が糖色(カラメル)で色つやと味付けをし、醤油を使わず仕上げて作るようになったのが毛氏紅焼肉。料理人の工夫の甲斐あって、紅焼肉は「毛家菜」の代表格に。甘ったるさや脂っこさは無く、噛むほどに肉の旨味をしっかり楽しめます。

真っ黒、くさうま!「長沙臭豆腐」

長沙臭豆腐は「 聞起来臭,吃起来香!(嗅げばクサいが食べるとウマい)」と言われ、毛沢東の熱烈なお気に入り。学生の頃に始まり、のちに北京から帰郷した際にも、長沙臭豆腐を必ず食べていたといわれます。

臭豆腐は独特の香りを放つ小吃(軽食)で、中国や台湾などを訪ねたときにチャレンジして「くさっ!でもうまっ!」とハマりだすファンも増えているとかいないとか。

台湾や紹興市では厚揚げのような見た目ながら、湖南省産はなんと真っ黒。色も香りもインパクト大! 黒色の正体は豆豉(とうち)で、湖南省劉陽市(浏阳市)特産の劉陽豆豉(浏阳豆豉)を使います。

「李厨」のオープン間もない頃にいただいた長沙臭豆腐。

作り方は、豆豉をお湯で煮て冷ましたのち、しいたけ・たけのこ・酒などを合わせ、豆腐を漬け込むことおよそ半月。色づけに緑礬(りょくばん:绿矾:硫酸鉄のこと)も加えれば、発酵の香りと旨味を蓄えた、真っ黒な長沙臭豆腐ができあがります。

なお、色と味の要となる劉陽豆豉は、小黒豆に塩を加えて発酵させ、水分を取り除いた調味料。これがとてもまろやかな味わいで、「李厨」でも料理に使っているほか、最近はこの豆豉を使い、豆腐を漬けるところから長沙臭豆腐を自家製しているとのこと。

漬け込みは浅めで、緑礬を使わないため、真っ黒ではなく濃いめの茶色です。とはいえ、厨房からテーブルまで運ばれてくる間、目にしなくても「あ!臭豆腐来るぞ!」とわかるくらい、しっかり香りが立っていますよ!

「李厨」自家製の炒長沙臭豆腐。

NEXT>4:激辛省にも癒やしはある。辛くない湖南料理とは?