伝統をベースに、革新的な黄酒を造る。
黄酒は、何よりも伝統を重んじてきました。ですが、それはよくも悪くも、昔から変わらない部分が多く残る状況を生み出します。かたや、他の醸造酒であるワインや日本酒は、製法の工夫や原料へのこだわりなど、日進月歩の勢いで成長を遂げています。
ただ、黄酒業界もここ2〜3年で大きな転換期を迎えており、革新的な黄酒を造る酒蔵も登場し始めています。
6種類の度数で展開する、中国初のオーガニック黄酒「夢義 MOHI」
以前、80Cでも紹介させていただいた国稀酒酿造有限公司は、中国で初のオーガニック黄酒として正式に認定を受け、日本での流通に向けて準備が始まっています。
なかには「55度の醸造酒」という規格外な酒も造っており、黄酒への情熱が溢れている、稀有なメーカーといえます。
在来種のもち米を醸す、混じりっけなしの紹興酒「夏之酒」
また、ここ最近、日本の高級レストランで”紹興酒の革命児”として確固たる地位を確立している紹興酒の新銘柄「夏之酒」も注目の銘柄です。
「夏之酒」を造るのは、紹興出身で紹興酒の最大手メーカーである古越龍山の東京事務所所長でもある夏良根さんです。「本物の紹興酒を造りたい」と日本で有機栽培を学び、故郷の紹興に戻って、紹興酒に最適な酒米を追い求めて栽培し、実現。
その原料を用いて造られた紹興酒が、この「夏之酒」です。原料へのこだわりだけでなく、伝統製法の紹興酒では当たり前だったカラメルの使用や、ブレンドを一切行っていないのも現代的です。いわば紹興酒界のシングルモルト的な存在で、「今までの紹興酒と全然違う!」という驚きを与えながら、既に多くのファンを生み出しています。
味わいはドライでありながら、穀物由来の旨味がしっかりと感じられ、伸びやかな余韻も楽しめます。香りもウイスキーのようなバニラ香や紹興酒特有のナッツ香も。
今日本で流通しているのは2018年に醸造して2021年に瓶詰めされたものですが、今年2023年に瓶詰めされたニュータイプは、クラウドファンディングを通して販売される予定です。乞うご期待!
また、作り手だけでなく、業界全体の変化も強く感じます。例えば、紹興酒のソムリエともいえる「紹興酒侍酒師」制度の立ち上げです。