中秋節の中華菓子、台湾では何を食べる?

中秋節に食べる中華菓子というと、月餅をイメージされる方も多いのではないでしょうか。日本では、茶色っぽく焼き上げた生地に、ずっしりと重い餡が詰まったものを見ますよね。これは広東式の月餅で、月餅にも地域色があります。

では台湾ではどうでしょう? これが思いのほか幅広く、中華菓子全般が贈られ、食べられているようです。

定番は、緑豆餡や魯肉を中華パイ生地で包んだ緑豆椪(リュドウポン:lǜdòupèng)や、餡の真ん中に、月に見立てたあひるの塩たまごが入った蛋黄酥(ダンファンスー:dànhuángsū)

緑豆椪(リュドウポン)。photo by Takako Sato
『四ツ谷一餅堂』の蛋黄酥。

また、台湾土産の定番であるパイナップルケーキ、鳳梨酥(フェンリースー:fènglísū)や、タロイモの餡をパイ生地で包んだ芋頭酥(ユゥトウスー:yùtóusū)もよく見ます。中秋節前後には、これらの中に塩たまごが入る特別バージョンが登場するほか、広東式月餅も店頭でよく見かけるようになります。

パイナップルケーキの中に塩たまごを入れた==。photo by Takako Sato
『郭元益』の鳳黄酥。塩たまご入りパイナップルケーキです。photo by Takako Sato
写真のパイ状の中華菓子は酥(スー)と呼ばれます。左から、『四ツ谷一餅堂』の檸檬酥、ずんだ酥、南瓜酥、紫芋酥。

台湾の中華菓子は甘さ控えめ。塩卵が苦手な方もいけるかも?

気になる味ですが、台湾の中華菓子は総じて甘さ控えめ。甘い餡に、肉や塩たまご(鹹蛋)を加えたさじ加減も絶妙です。特に塩たまごは独特のねっとりとした質感が主張しすぎず、苦手な方も食べやすいと思います。

2023年の中秋節前に台湾に行った友人によると、菓子売り場では緑豆椪や蛋黄酥などの台湾式中華菓子が見られるなか、黄身餡がトロリとした流心酥(リウシンスー)を販売する「三統漢菓子」に長蛇の列ができていたそう。

餡が流れ出す黄身餡は、元々は香港が発祥と思われるもの。それをさらにタロイモ餡やパイナップルケーキ餡、抹茶餡などで包み、ホロホロサクサクの生地で仕立てているのが、実に台湾らしいですね。

ちなみに、私のおすすめの台湾菓子は、昔ながらの緑豆椪(リュドウポン)です。緑豆の皮をむき、中の黄色い部分だけで餡を作り、白い層が重なったパイ生地に包まれており、「台式月餅」とも呼ばれます。餡は黄色、形は丸で月のようですね。

緑豆餡がほんのり甘くてくちどけがよく、お肉がや塩たまごが入ると甘じょっぱくなるのも魅力。シンプルに緑豆餡だけ包んだものや、緑豆餡に魯肉が入ったもの、緑豆餡の真ん中に塩たまごが入ったものなどがあります。

台湾は台中の豊原に本店を構え、創業100年を超す『雪花齋』の雪花月餅。餡は純綠豆沙(緑豆餡)です。白く薄い層が重なるパイ生地も特徴。詳しくはこちらで。
豚肉入りの緑豆椪(リュドウポン)。台湾南部では四角く焼き上げたものも見られます。中は緑豆餡と豚肉です。
「オークラプレステージ台北」の緑豆椪のパッケージ。各社趣向を凝らしたパッケージも素敵なのです。

また、緑豆汁粉の緑豆湯(リュドウタン)や、緑豆の粉で作った型抜き菓子の緑豆糕(リュドウガオ)など、中華圏には緑豆を使うスイーツがたくさんあります。

しかし、緑豆はあまり日本人にはなじみがなく、友人たちに緑豆のお菓子を食べてもらうと「日本の白餡みたいで食べやすい」「甘さ控えめでいいね」と好評なので、もっと広まっていいかもしれません。

友人手作りの緑豆糕。
和生御品の緑豆黄。緑色の皮を剥き、中の黄色い部分のみを使った、ホロリとくずれる上品なお菓子。

台湾南部の高雄に本拠地を構える中華菓子メーカー『舊振漢餅文化館』では、緑豆椪をはじめ、中華菓子づくりの教室も開催しています(要予約)。2018年の80C(ハオチー)の記事ですが、緑豆椪の作り方に興味のある方は、旅行の計画に入れても楽しそうです。

『舊振漢餅文化館』では緑豆椪の料理教室が体験できます(要予約)。photo by Takako Sato

次のページでは、日本で買うことができる、台湾式の中秋節のお菓子をご紹介します。

NEXT>贈り物にもおすすめ!日本で楽しめる台湾菓子