この記事は、四川省の省都・成都市の文化情報発信サイトGo Chengduの連載「川菜一番」の日本語版です(中国語版はこちら)。「外国人が見た四川料理」をテーマに、80C編集のサトタカが成都の美食を日中のメディアで発信します。

昔から中国人は冷たいものを食べない、といわれる。それは正解であり、間違いでもある。

今やアメ横や池袋でもパックで買える、つるつるとした幅広麺・凉皮(リャンピー|涼皮)や、地方によって味付けが異なる凉面(リャンミェン|涼麺)など、実は“凉”がつく食べものは中国にけっこうある。

これらはいずれも“冷えている”のではなく“熱くない”というのがポイント。涼をとりたい気持ちは中国も日本も一緒なのだ。

特に夏、蒸し暑い成都では、凉(リャン)なおいしさや、甘く冷たい冰(ビン)のきらめきと出合える。そこで今回は、中国茶と軽食とともに、中国の文化を伝えるカフェ『甘露(かんろ)』の広報で、四川省出身の張鈺若(ヂャンユールォ)さんの思い出話も交えながら、現地で親しまれている夏のおやつをご紹介しよう。

小腹を満たす救世主!定番のおやつ麺、凉面(リャンミェン|涼麺)

四川の麺といえば、日本で真っ先に名が挙がるのは担担麺。しかし今の成都では、担担麺を探す方が難しい。

それよりも夏、圧倒的に愛されているのは凉面(リャンミェン|涼麺)だ。注文すると、ゆで置きの麺に、店のお姐さんが葱や香菜、もやし、漬物、揚げた落花生、辣油、花椒などを手際よく入れて、ホイッと渡してくれる。

成都市郊外の市場にて。市街地では小さな屋台で提供していることが多い。

レストランの料理と言うより、完全に屋台の味。これが適当に作られたように見えて侮れない。唐辛子や辣油がピリッときて、刻んだ漬物の旨みがじわり。麺は既に冷めているので食べ急ぐ必要もなく、小腹が空いたとき、これほどちょうどいいおやつもない。

「甘露」の張鈺若さんにとっては、これが昔懐かしい定番の“買い食い”メニューだったという。

「小学校の近くに文房具屋さんやいろんなお店があって、ここに夏、凉面を出す店があったんです。でも、子供はお金ないじゃないですか。だから店の人が子供用に小分けして売っていて、5毛銭(5角=1元の半分)で買って食べて。

他にもいろいろ食べながら帰りたいので、これだけでお腹いっぱいにならないようにして。油炸冰淇淋(ヨウジャービンチーリン|揚げアイス)も懐かしい味です。晩ごはんが食べられなくなったら怒られるので、そうならないように気をつけながら(笑)」

これはまるで、学校のそばの駄菓子屋で100円分のお菓子を買い、友人と食べ歩きしながら下校する感覚と一緒だ。時は30年以上前。こちらがスナック菓子の『うまい棒』なら、あちらは手作りの麺なのでより贅沢である。

ちなみに、同じ凉面でもレストランでも味わえるのが鸡丝凉面(ジースーリャンミェン|鶏絲涼麺)。細切りの鶏肉が入っており、近年は麺をくるりと巻き付けた現代的な盛り付けもよく見られる。

鸡丝凉面(ジースーリャンミェン|鶏絲涼麺)。麺を巻いた現代的な盛り付け。

凉面も鸡丝凉面も、四川式冷やし中華というよりは、つまんで楽しむ夏の味。分け合って食べるのも楽しみのうちだ。

伊勢うどん級の極太麺!コシとコクの甜水面(ティェンシュイミェン|甜水麺)

もうひとつ、‟熱くない麺”として親しまれているのが甜水面(ティェンシュイミェン|甜水麺)だ。

こちらはほっそりとした凉面とは対照的。伊勢うどん級の極太麺に、麻(しびれ)、辣(辛み)、甜(甘み)、鮮(うまみ)、香(香り)を湛えたたれがガツンと絡み、パンチのある味が楽しめる。

成都「张四哥手工甜水面 太古里总店」の甜水面。麺はコシがしっかり。photo by KAKA
濃厚なタレが小指ほどの麺に絡み合う。量が少なくてもパンチがあって満足感がある。photo by KAKA

中国の麺は全般的にコシがない印象があるが、甜水面は別格。讃岐うどんをさらに強くしたようなコシがあり、たれにはスパイスや砂糖を加えて煮た複製醤油、芝麻醤(練りごま)、すり下ろしにんにく、辣油がたっぷりかかる。

啜れる麺ではない。箸で手繰りながら、モギュモギュと噛み締めて食べる快感がここにある。

ところてん風魔性のおやつ、凉粉(リャンフェン|涼粉)

凉面や甜水面は小麦粉の麺をベースにしているが、豆の粉をベースにしたおやつもある。凉粉(リャンフェン|涼粉)だ。

四川老字号(老舗)に指定されている成都「马旺子・川小馆」の川北凉粉。photo by 马旺子・川小馆

ところてんのような口当たりのよさから、カロリーゼロのような気分になるが、原料は緑豆やエンドウ豆などのでんぷん質。それらの粉に水を加えて加熱し、糊状になったものを冷やし固め、条切りにしたり、専用の道具で細切りにしてタレをかけたものがこれだ。

口にするとぷるんと弾力があり、ややもっちり。辣油、豆豉、黒酢、醤油、にんにくなどを混ぜたたれと、香菜、ねぎ、砕いたピーナッツなどの薬味を和えて口に運んでいるうちに、気づけば一皿、溶けるようになくなってしまう。

味付け、色、太さは、地域、店、原料によって異なるが、四川省の無形文化遺産ともなっているのが川北凉粉(チュワンベイリャンフェン)。四川省の北部、すなわち‟川北”の南充市発祥と言われ、芝麻醤を使う中国西部の凉粉と異なり、辣油と豆豉をガツンと効かせているのがクセになる。

凉面よりもさっぱりとしていて、ちまちまつまみ続けるのには持ってこい。おやつはもちろん、レストランの前菜として人気があるのもうなずける。

麻辣の後の癒し系。もっちり&まったり風味の凉糕(リャンガオ|涼糕)

続いては甘いおやつもいってみよう。凉糕(リャンガオ|涼糕)は不思議な食べものだ。乳白色で丸く冷たく、ゼリーのようでもあるが、コーンスターチを練ったようなもっちり感があり、まったりと甘い。

凉糕(リャンガオ)。まんまるの型抜きに黒蜜たっぷりが定番のビジュアル。

日本にはあまりない味と食感なのに、食べるとどこか懐かしいのは、米から作られているからかもしれない。うるち米の粉を水で溶き、熱を加えながら練ったものを型に入れ、しっかり冷やせば凉糕のできあがり。これに黒蜜をたっぷりかけて、甘々にして食べる。はっきりいって、キレがない甘味だ。

しかし辛いものを食べた後、この凉糕が本領を発揮する。例えば、酸辣粉(スァンラーフェン|激辛で酸っぱいスープに入った太春雨)を食べた後に凉糕を食べると、舌の上をやさしくキレイにリセットしてくれるのだ。

「好又来」は酸辣粉の人気チェーン店。左端が凉糕。この看板にあるのはどれも四川を代表する小吃ばかり。

辛さと甘さはお互いを引き立て合う。成都の火鍋店では、餅を揚げて黒蜜をかけた炸糍粑(ザーツーバー)など甘いものを必ず用意しているし、料理店では、辛い味の合間に、あんこ、もち米、豚肉を重ねて蒸した甘い料理・甜焼白(ティェンシャオバイ)を注文することができる。凉糕もまた、酸辣粉や凉面とセットで食べると最強。一緒に売られているのも理に適っているのだ。

最後に、これぞ夏の風物詩! 時代とともにアップデートし続ける冰粉(ビンフェン)をご紹介しよう。

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