中国料理FROM天台山!当企画は、2021年にオープンした中国浙江省の山岳リゾートホテル「星野リゾート 嘉助天台(かすけてんだい)」総料理長・山口祐介さんの中国食探訪記です。仏教の聖地・天台山から、ここに住み、食を生業として働く料理人の目線で見た《中国の食》をご紹介します。★1回目から読む方はこちらからどうぞ! |
お久しぶりです、山口です。今回ご紹介する中国の味覚は、“江南食巡り”からは少し離れて、福建省の美味にフォーカスしたいと思います。
地名を聞いてもピンとこないかもしれませんが、中国の南方沿岸部に位置する福建省は、国外で活躍する人物が多く“華僑のふるさと”とも呼ばれる場所。在日中国人の中でも福建省出身の人たちは多く、長崎中華街は福建省出身者を中心に形成された歴史もあります。
そんな福建省への旅に惹かれた理由は、大きく2つ。
まず1日目は福建沿岸部の海鮮を知り、海鮮料理を食べること。そして2日目が本丸、乾物を使った中国料理としてあまりにも有名な超高級蒸しスープ、佛跳墙(ぶっちょうしょう)を、発祥の店『聚春園』で食べることです!
港町・福清の海鮮料理店でシンプルな蒸しアジのおいしさに悶絶!
最寄りの天台山駅から福建省福清市までは中国高速鉄路(CRH)で約5時間。実はこの天台山駅、天台山観光の拠点として2022年1月に開通したばかりの新駅で、天台を訪れるお客さまも、住んでいる僕たちにとってもありがたい存在となりそうです。
山林に位置する天台とは対極に、福建省福清市は海に面した港町。地図を見てもわかるように、東シナ海に面しており、入り組んだ沿岸を持つ半島と島が主たるエリアです。この立地なら、海鮮料理を食べないわけにはいかないでしょう。
旅の道連れは、毎度おなじみ厨房のメンバーです。そして、料理人の旅で最も肝心なのが店選び。福建省南平市出身であるスタッフの知人が言うには「地元の料理を食べるなら、一番おいしいのが『第一家飯庄』ですよ」という話。その言葉を信じて、いざ店へ!
店内に入ると、所狭しと海鮮がずらり。これは中国の海鮮レストランの基本スタイルで、それぞれ重量で金額が決まります。
品定めして注文したのは、アジ、イイダコ、花付きの姫胡瓜、この店で人気ベスト3に入るという豚ガツの煮込みなど。なかでも抜群においしかったのがアジです。
これが、生のアジに塩と生姜をのせ、内臓は抜かずにただ蒸しただけの塩蒸(盐蒸:イェンジォン:yánzhēng)なのですが、この塩がバチッと効いていてたまらなく美味!
特にこだわりの塩を使っているからおいしいというような料理ではなく、アジそのものが持っている素材のうまみ、鮮度、ストレートな調理法の掛け算の勝利でしょう。