こうして中国ローカルフードの世界に4年間どっぷり浸り、2019年に帰任。今は新橋のサラリーマンとなったが、中華料理店に行った際は、意識して地三鮮(ディサンシェン)を頼むようにしていた。
当たり前だが、中国に比べて日本は中華料理の選択肢が少なく、料理の価格も上がる。それなら好きな時に食べたいものをつくりたい。その前に、好みの地三鮮の味を覚え、自作できるようになりたい。そう思ったからだ。
新橋・新小岩・東京近郊のマイベスト地三鮮を探せ!
そこで始めたのが地三鮮行脚だ。リサーチエリアは勤務地付近の新橋と、自宅付近の新小岩。最初はふつうに味わっていたが、食べ込むうちに、地三鮮を分解して捉えられるようになってきた。
新橋「沸騰漁府」
ニンニクがガッツリ効いている。当たり。
小岩「辣香坊」
ジャガイモ:ナス:ピーマン=7:2.5:0.5。ほぼじゃがいも料理。辛さなし、醤油、塩、砂糖だけのスタンダードな味付け。
新小岩「食全食美」
禁じ手の肉入り。ジャガイモ:ナス:ピーマン:肉=5:3:1:1でバランスよし。醤油が少なめなのか全体的に白っぽく、にんにくは感じるものの薄味でちょうどいい感じ。辛さはゼロ。
汐留「健康中華 青蓮 汐留メディアタワー店」
メニューにないが、頼んだら作ってもらえた。肉料理並の価格を言われたため、肉も入れてもらった結果、ジャガイモ:ナス:ピーマン:玉ねぎ:肉=1.5:5:1:1:1.5。ナスがメインの地三新は初めて。玉ねぎ入りも珍しい。
味付けはスタンダードな醤油味、甘さ控えめ、辛さゼロ、にんにくやや多め。好みどストライクではないけど、完成度高し。
新小岩「貴州火鍋」
地三鮮は野菜を一度油通しすることが多いが、ここは揚げずにそのまま炒めたタイプ。
成田「中国発酵料理と日本ワイン SABOTEN」
燻味がすごい。燻製唐辛子を入れるだけでこんなことになるのか。鰹節を入れて再現してみたくなった。
要町「福満苑 鼓楼」
ジャガイモ、ナス、ピーマンの比率がほぼ同じ。味付けは見た目通り、東北スタンダードな醤油系でとろみあり。北京料理店で料理長をやっていた方だけある。
西川口「東北餃子王 帥府 西川口店」
スタンダードな味付けだが、ややしょっぱい。
新小岩「チャ〜ボン多福楼 新小岩店」
ジャガイモ:ナス:ピーマン=4:5:1くらいでナス多め。スタンダードな東北系の地三鲜としては完成度だいぶ高し。味の濃さがいいのかなぁ。ご飯が進む。
新小岩「聚楽飯店」
餡掛けっぽい見た目で、今まで見た中で一番汁気が多い。ジャガイモに焦げ目がついていて、なおかつ軟らかいことから揚げ煮と思われる。味付けは甘くなくてまずまず。
錦糸町「美味亭」
家庭料理っぽいシンプルさだと思いつつ食べてみたら、具のバランス、火加減、味付けの方向性などだいぶ自分の理想に近い。塩味、辛み、にんにくを増したらほぼ完成するのではないか。何だか品がある感じがしたのは、油に臭いがないからかなぁ。
じゃがいも多めに見えますが、掘って行くとナスもほぼ同量。じゃがいものホクホク感、ナスのトロトロ感ともちょうどよし。甘さ控えめ、タレのとろみも控えめ。油は多め。
汐留「China Doll」
わりと汁気が少ないなタイプ。珍しくジャガイモよりナス多め、トマトが入っているのが珍しい。スタンダードな東北系の黒くて甘くて汁気が多い感じより、こういう方が好きかなあ。料理名は東北三宝。これも他では見ない。
食べ歩いてみると、地三鮮は「じゃがいも、ナス、ピーマンによる野菜料理」という定義だが、意外と肉入り、さらに野菜を追加して玉ねぎ、トマト入りなどもあるのだった。
こうしていろいろ食べ歩く中で、好みの地三鮮がどういうものなのか、自分なりに掴めてきた。
・ほくほくのジャガイモ ・とろとろのナス ・ジャガイモ、ナス、ピーマンの偏りのないバランス ・甘さ控えめ、辛さ強め ・ご飯が進む適度な塩分 ・とろみは控えめ ・色は黒すぎない(黒くてとろっとしていると甘い味付けが多い) |
スタンダードな東北料理とはちょっと違うが、加熱した野菜の食感と、辛みがあってとろみが少ないのがポイントのようだ。
これまで食べた中では、錦糸町「美味亭」は基本と理想に近かったが、成田「発酵中華と日本ワイン SABOTEN」の辛みや汁気の少なさが好みだ。道が見えてきたぞ。
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TEXT & PHOTO アベシ