横浜中華街に行ったら、どこで何を食べればいい? 魂が震える本物の味はどこにある…? 当連載は、横浜で美味を求める読者に向けた横浜中華指南。伝統に培われた横浜の味と文化をご紹介します。◆目指すゴールとコンセプトはコチラ(1回目の連載)をご覧ください。

都内はセミの声も聞こえ始めて夏目前。そろそろ気になり始めるのが冷やし麺ですね。横浜中華街には、中国の麺を彷彿とさせる、古風な冷やし麺を出す店があり、この味が恋しくなります。

「中国人は冷たい麺なんて食べない」という声も耳にしますが、実際は常温よりちょっと冷たいくらいの麺は食べられています。これらの麺は涼麺(簡体字で凉面:リァンミィェン)呼ばれ、各地に郷土麺的なものがあります。

そこで今回は、横浜中華街で食べられる夏の涼麺をご紹介。その前に、中華圏の涼麺について少々予習しておきましょう。

濃厚なナッツ香とにんにくのダブルパンチ!北京の庶民の味、麻醤麺(マージャンミィェン)

まず、北京の味としてご紹介したい涼麺といえば、麻醤麺(簡体字で麻酱面:マージャンミィェン)

麺の上にはピーナッツ風味のたれにネギとゴマ、そしてどっさりおろし生にんにく。これが小麦の香りが立つ麺と引き立て合う悪魔的な魅力があり、しっかり混ぜて口に入れると、口の中で爆発するような甘みとうまみがあります。

北京語言大学の涼麺はにんにくどっさり。中国留学組の読者の中にも「あれだ!」と膝を打つ人がいるはず。

何軒も食べ歩き、その中でとびきり美味しかったのは、筆者の通っていた北京語言大学の「瀾閣餐庁(会議中心餐庁)」ランチで食べられる麻醤麺。

その想いはみんな同じなのでしょう。この時期、まわりのテーブルを見渡すと、客の半分くらいはこの涼麺を食べているのではないだろうかというくらい、揃って同じ皿が並ぶほどの人気です。

そして「うまいけどデートには使うな」と書かれる、新街口の「新川面館」も麻醤麺の有名店。これぞ国営単位(国営企業)らしい風格の店で、常時フル回転の人気ぶり。

北京「新川面館」。

肝心の料理写真は手ブレで使えず恐縮ですが、にんにく臭くなっても食べてしまう、中毒性のある料理とはまさにこれ。毎年、この時期になると食べたくなります。

副食店で調味料を調達!家でも作れる麻醤麺

そんな麻醤麺は、家でも簡単に作れます。写真は麻醤麺のたれの材料、麻醤(マージャン)を売る、北京の老舗の副食店(食料品店)です。

赵府街副食店。1956年設立の老舗。

店主は店の佇まいにぴったりのおじいちゃん。カウンターに鎮座する、古式ゆかしい秤を指差して「単位が改定されたから、もう使わないことになってるけど置いてる。かっこいいだろう?」と、ばりばりの北京なまりがたまりません。

副食店の中はオールド中国のタイムカプセル。そう、俺はこういう中国に来たかったんだ。

「どっから来たんだ、日本か」と確認すると、おじいちゃんはノリノリで実演開始。大きな寸胴から麻醤を取り出し、「このタレに水を少しずつ入れ、とにかくよくかき混ぜる。白っぽくなったらできあがりだ。これは俺の昼飯にする」というじゃありませんか。※注:実際には塩や醤油、胡麻油などが入ります。

しかしこのタレ、いったいどこで作られているのでしょう。尋ねてみると「ここで作ってるのかって?順義区(空港のほう)の工場で作ってるぜ(ドヤ顔)。うちのはゴマだけじゃなくてピーナッツも入ってる」 。

これは初耳でした。あとで読んだ記事によると、北京人は「二八醤」といって、ゴマペーストとピーナッツペースト2:8の割合を好むとか。ここはまさに北京の味を売っていたんですね。

その足で市場にいけば、できたての麺が簡単に手に入ります。さきほどの麻醤に、水、醤油や黒酢などの調味料を加えたらタレのできあがり。Youtubeなどでもレシピが紹介されているので、家で再現してみてはいかがでしょう。

口の中の水分を一気に持ち去る、台北の麻醬涼麺

また、多くの日本人が旅する台湾台北にも涼麺屋さんがあちこちにあります。筆者が現地に住む知人のおすすめで行ったのは、台北の松山空港にほど近い「戴記福建涼麵」。台湾好きの人なら「あれね」と思い出すであろう、街の名店です。

こちらの麺は加水率の低い、ゆで足りないかと思うようなぼそぼそ系。口の中の水分を一気に持っていかれますので、のどにつっかえないよう、スープを一緒に注文することが肝心です。

「戴記福建涼麵」の麻醬涼麵。潔いタレのかかりっぷり。皿からはみ出してるのは愛嬌です。

なんとなく、中華圏の涼麺のイメージができてきたところで、舞台を横浜中華街へと移しましょう。今の時期、ここではどんな涼麺が食べられるのでしょうか。次のページでご紹介します。

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