横浜中華街に行ったら、どこで何を食べればいい? 魂が震える本物の味はどこにある…? 当連載は、横浜で美味を求める読者に向けた横浜中華指南。伝統に培われた横浜の味と文化をご紹介します。◆目指すゴールとコンセプトはコチラ(1回目の連載)をご覧ください。

一見客の閑古鳥が鳴く店もある一方で、常連客に支えられ、今も昔も変わらず丁寧な料理を出す店の客入りが目立つようになった、秋の横浜中華街。

タピオカ店が減って、台湾鶏排の店が増えるなど、街の変化はありますが、常連客がいる店は、環境が変化しても地に足がついているもの。やはりここは、食べることや料理が好きな方がちゃんとおいしい思いをして、楽しんでもらえる街であることに変わりはないと感じています。

さて、そんな店の中から今回ご紹介するのは、お持ち帰りにぴったりの叉焼(チャーシュー)です。

石川町「廣東厨房 鴻」のネギチャーシュー麺。こちらは豚肉の中でも脂の少ない部位で作られる〈痩叉焼〉。

テイクアウトの叉焼の何がいいかって、家の料理のクオリティが数段上がること。炒飯ひとつとっても、ちょい足しするだけで違いは歴然。野菜炒めや土鍋炊きごはんなどに入れれば、ほかにない旨みと香りに気分は爆上げ。

店では脇役的なポジションに留まりがちな叉焼ですが、料理好きにとって、これほど夢のあるテイクアウトは他にありません。

ちなみに筆者のチャーハンのレシピは、中学時代に読んだ『椎名誠のあやしい探検隊』シリーズの中華シェフとして登場する、林さんの作り方が基本。『林さんのチャーハンの秘密』という本も出版されており、冒険やアウトドアに憧れた男子であれば、覚えのある方もいることでしょう。

林さんのレシピは、旅先でもで作れるようにシンプルな材料で特殊な技は一切なし。そんな男の炒飯も、中華街で買ってきた叉焼を入れると印象は激変。本格的なチャーシューは、とても使いやすいうまみ調味料ともいえるのです。

林さん式の炒飯に叉焼をプラス。野菜はネギかレタスがおすすめ。

また、赤色を帯びた叉焼は、煮豚よりも総じて塩分が少ないため、ラーメンに乗せると本来の味そのものは目立たなくなるのですが、叉焼の黄金コンビであるネギと合わせれば格段に存在感を増し、主役に躍り出る勢いに。

ありもののインスタントラーメンさえも、ちょっとしたご馳走に大変身。家族に年配の方がいて、外での食事には抵抗があるという方も、若い家族が横浜中華街で買いものして、家族みんなでお土産を楽しむなんて楽しみ方もありだと思います。

家人からは「わたしの青春の味に対する冒涜」と呼ばれますが、中華街の叉焼があれば、在宅ワークのランチで作るインスタント麺が本格ネギチャーシュー麺に早変わり。

叉焼が1本あれば、料理につまみに夢が広がること間違いなし。まず筆者おすすめのこの店の叉焼からご紹介しましょう。

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