お宝ゴロゴロ!至高の蒸しスープ「広東式佛跳牆(ぶっちょうしょう)」とは?
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香港人や広東人は“スープ星人”だ。さまざまな食材を組み合わせた例湯(日々のスープ)は日本人にとっての味噌汁的な存在だし、街角のスープ専門店に立ち寄れば、体調に合わせて手軽に栄養補給もできる。
複数の生薬を取り合わせて一包にまとめた養生スープの素はあちこちで売られており、煎じて飲む漢方薬だって、考えようによっては精進スープみたいなもの。
一方、美食の観点から見ると、スープは食材のエキスを抽出した栄養とうまみの塊。液体そのものが至高の存在といえる。
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そんなハレの日もケの日もスープをたしなむ食文化において、スープ界の最高峰に位置付けられているのが佛跳牆(ぶっちょうしょう|fótiàoqiáng|フォーティャオチァン |簡体字:佛跳墻)である。
鶏や豚などの肉や家禽、金華ハムなどの加工品、フカヒレ、ナマコ、浮き袋など、海の乾貨を贅沢に使ったスープは、漫画『美味しんぼ』などでも紹介されているので、聞いたことがある人も多いだろう。
そんな佛跳牆は、清朝(1644-1912年)末期に誕生したとされる福建省発祥の料理。福州市にある「聚春園」がルーツの味を受け継いでいるとされる。
本場の佛跳牆は、80C(ハオチー)の記事「山口祐介の江南食巡り⑦ 聖地巡礼!中国の超高級蒸しスープ・佛跳墻(ぶっちょうしょう)発祥の店に行ってきた」でご紹介しているのでそちらに譲るとして、実は佛跳牆には2つの系統がある。
まずひとつが発祥の地の福建式だ。こちらは器を直火にかけて炊いて作り、福建老酒を香りづけに使うのが特徴。そしてもうひとつが、今回の宴席に出た広東式。こちらは海の乾物を多く用い、蒸して作るのが基本だ。
蒸すメリットは、壷の中の水分が激しく対流しないため、スッキリと透明感のあるスープがとれること。筆者の知る限り、日本の高級中国料理店で食べられる佛跳牆は、ほぼこの広東式で作られている。
佛跳牆の具を見てみよう
今回、壷の中に収まったのは、丸鶏、豚肉の塊、金華ハムに、干し鮑、大粒の干し貝柱、干しつぶ貝、魚の浮き袋、牛アキレス腱、どんこなどの乾貨をたっぷり。乾物はそれぞれに下ごしらえをするため、数日前からの準備が必要となる。
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さらに、時間差でフカヒレ、ナマコも壺の中に投入。こちらは味を抽出する食材ではなく、味を含める食材なので、既にうまみが抽出されたスープの中に後から入れ、じんわりと味を含めていく。
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蒸したての熱々の状態でテーブルに運ばれた佛跳牆の壷は、蓋を取ると同時に、海の乾貨と動物性のうまみを湛えたふくよかな香りが、湯気にのってテーブルの上へと流れ落ちていく。その香りはやわらかに広がり、眼前の碗にスープとして蓄えられる。なんと贅沢なひとときだろう。
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さらにこの日は、佛跳牆の中で味を煮含めたフカヒレ、ナマコ、出汁となった干し鮑を別の皿で仕立てて出すことに。なぜなら、それぞれスープに入れておくには立派すぎる大きさなので、陸会長のアイデアで、料理として提供することとなったのだ。
まず、1枚100gほどあるヨシキリザメの尾びれは、蟹と卵白の仕立てでフカヒレ姿煮となった。淡泊な中にもスープのしっかりとしたうまみがあるのは、いかにも広東料理らしい。
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また、干し鮑とナマコはこっくりとした醤油風味の煮込みで登場。ナマコは約12cmと想像以上に大きく戻っており、ぷるんと跳ね返る弾力を残した食感が身上。
干し鮑はブランドとして名高い岩手県吉浜産のもので、30頭(1斤600gあたりの個数=乾物の状態で1個20g)を使用。噛むとむちっと密度が高く、ミネラル感を蓄えた〝うまみの塊”と化していた。
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