AI(人工知能)が目覚ましく進歩する今、さまざまな仕事が自動化に向かっている。どこか空恐ろしい気もするが、使いこなせば便利なことは間違いない。中華系の調理の世界も例にもれず、調理ロボット分野が成長している。

自動調理という観点では、大阪王将の炒め調理ロボット「I-Robo」や、リンガーハットの「IH自動野菜炒め機」など、チェーン系レストランで既に企画・導入されているが、実はガチ中華の世界にも、こうしたものは存在する。それは、中国発のAI中華鍋ロボット(电磁智能全自动烹饪机器人=インテリジェント電磁全自動調理ロボット)だ。

どこが“智能”かというと、中国料理に必要な火力と時間を、調理プロセスに応じてコントロールできる点だ。最初に唐辛子の香りを引き出す加熱は弱火、肉を入れたら強火で長め、最後の薬味は一瞬で…といった細かな調整ができ、導入店舗によると、中華料理人半人前くらいの働きをしてくれるという。

東京2020オリンピック・パラリンピック選手村跡地にできた「麻辣大学 ららテラス HARUMI FLAG店」に、今年導入したばかりのAI中華鍋ロボットがあるというので、さっそく見学させてもらった。

ららテラス HARUMI FLAG。東京駅からバスで行ける。最寄駅は勝どき。
麻辣大学 ららテラス HARUMI FLAG店。四川料理に加えて、専門の点心師がつくる餃子や油条(中国式揚げパン)、肉まんなどが人気だ。

価格は170万。家庭用3つ口ガスコンロと同等にコンパクト

それは、想像以上にコンパクトだった。見るまでは、よくある回転釜のようなイメージをしていたが、面積は家庭用の3つ口ガスコンロ程度(W599×D650×H470mm)。

取っ手つきの中華鍋に、空気穴と食材を炒めるための道具がついた蓋、食材や調味料を投入するためのステンレス容器がセッティングされており、見た目はシンプルだ。

小型电磁智能全自动烹饪机器人(小型電磁全自動調理ロボット)。深圳に本社を構える智谷天厨科技有限公司が企画・製造している。

製造メーカーは、2018年に深圳で創業した智谷天厨科技有限公司。有名シェフの協力を仰ぎながら、調理ロボット分野で頭角を現すベンチャー企業である。

台の上にある中華鍋はフッ素樹脂加工された上、ハニカム紋がついており、炒めた食材がくっつきにくい仕様。取っ手があり、これだけ見ると普通のウォックパンだ。

鍋の横にあるのは、食材や調味料を入れる容器。投入したいものを手前から順にセッティングすると、順番に入れてくれる。

使い方は実にシンプル。作りたい料理のレシピ(使う食材と分量、各食材を炒める火力と調理時間)を登録しておけば、画面を押すだけで全自動調理がスタートする。一部のレシピはメーカーから提供されており、その通りにセッティングすれば現地の味が再現できらしい。

画面に「烹饪次数」とあるのは調理回数のこと。「高菜肉絲炒飯」以外0回なのは、まだ導入したばかりだから。

このAI中華鍋ロボに注目した「麻辣大学」オーナーさん曰く、価格は日本円にして170万。さらにできることが広がる中型サイズは2倍の340万だという。人件費を考えると、なかなか現実味のある金額だ。

鶏肉ふわっ!香りはしっかり。AI中華鍋ロボットが作る四川料理の宮保鶏丁

食材はあらかじめ切り揃えておく。

店では導入して間もないため、これから活用方法を考えていくとのこと。そこで今回、AI中華鍋ロボットの腕試しとして作ってもらったのが、四川式の宮保鶏丁(ゴンバオジーディン|gōngbǎojīdīng)だ。

宮保鶏丁は、唐辛子の焙煎香に、花椒が効いた軽い甘酢を合わせた味付け(=宮保)の鶏肉料理で、四川料理の定番ともいえる一品。

作り方は、小塊にカットして下味をつけた鶏肉、切り揃えた野菜、調味料を備え付けの容器に入れ、あらかじめプログラミングした「宮保鶏丁」のボタンを押すだけ。油は別途注ぎ口があり、指定した量を鍋に注ぎ、指定した熱量で加熱してくれる。

宮保鶏丁の食材を、調理プロセスに準じて容器にセッティング。

どの食材をどの火力でどのくらいの時間加熱するかは思いのまま。料理人が作る場合、鍋を振りながらお玉やヘラを使って食材に火を通すが、AI中華鍋ロボットは、変形した菜箸のようなもので、シャカシャカと空気を孕みながら混ぜているようだ。詳しくはこちらの動画でどうぞ(2分38秒)。

こうして出来上がった「宮保鶏丁」がこちら。

口すると、鶏肉はふわっとした食感で、唐辛子の香りも立っている。あらかじめ準備してある揚げピーナッツの香ばしさや調味料の香りも手伝って、箸が進む。この感じなら、晩ごはんの一品としてUber Eatsなどで出前するなら十分いけそうだ。

続いては本丸、日本人が大好きな炒飯を作ってもらうことに。日本人にとっては炒飯といえば鍋振り、鍋振りといえば炒飯というイメージが強い。これがうまくできれば、AI中華鍋ロボットの株も上がりそうだ。仕上がりは如何に…?

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