座談会シリーズ「中華好き人口を増やす会」は「中華好きを増やす」というミッションのもとに集まった、同士のトークセッションです。中華を愛し、中華に一家言あるメンバーが、円卓と料理を囲んで、中華の未来について熱く語り尽くします。第8回は、味わいに大きな影響を与える香りについて。中華の食欲そそる香り(開催日:2012年3月8日「新橋亭 新館」) |
2012/6/13up
香りと油を炎でまとめる
古川 香りという観点で考えると四川料理、あと中国にいる時に食べた新疆(しんきょう)料理がすごくショッキングな出会いでした。やっぱりクミンですかね。カレーっぽいんですけど、香りがすごい立つんですよ。そこにトマトをあわせたりする。
福島 あと、衝撃といえば四川の汁なし担担麺。これ、あっちではすすっちゃいけないんですよね。ラーメンみたいに食べたら、ゴボッってむせました(笑)。周りの人を見たら、みんなすすってないんですよ。
古川 水煮牛肉(スイジュウニュウロウ)も印象的な料理だと思うんですが、いかがですか。
― 激辛ですよね。
古川 でも、香りがすごくいい。
福島 あれ、アレンジしようとしてるんですけど難しいですね。なかなか商品化できないです。
― それは皆さんが食べやすいように、もうちょっと辛さを抑えるということですか。
福島 そこにはせめぎ合いがありまして…。そういうふうにすると水煮牛肉とは違う風になってきて、もはや名前がつけられない料理に(笑)。
― なるほど(笑)。CookDoで、次の新商品にできそうな新しい味っていうと、どういうものがありますか。
古川 回鍋肉みたいに、揃えやすい食材でできるものが求められていますね。モヤシとか、豚肉とか、キャベツ、ナス…、そのへんのものだと、やっぱりご家庭では作りやすいですよね。で、それを実現する「豚肉ともやしの香味炒め用」っていう商品が出てるんですけど、それは隠し味にこの青花椒油を入れました。
― 青山椒の爽やかな香りですね。
古川 これが料理の湯気からほわっと香って、家ではなかなか作れない味わいを楽しんでいただけるようにしています。それと、ご飯に合うおかずであることもポイントです。例えばCook Doの回鍋肉に卵を合わせて、卵黄を乗っけていただく、「スタ丼」みたいな感じでご提案するとかね。味噌と卵黄というのは相性がいいですから。
― 雰囲気が変わって、がっつりごはん食べるぞという感じになりますね。
田中 味の素さんで市販されているパック状の合わせ調味料では、和洋中華、どれが一番種類が多いんですか?
古川 圧倒的に中華ですね。市販用の中では。
田中 そうか、中華イコール惣菜だもんね。要するにおかず。
古川 そうですね。
田中 高級なもの、ふかひれスープみたいなのはなかなか出ないよな。
古川 身近で揃えられない食材が必要となると、ご家庭でそれは無理だよねっていう話になりがちで。そのあたりはぜひバーミヤンさんがしっかりと…!
福島 バーミヤンが次のステップとして考えているのは、新しい醤(ジャン)、味付けの開発です。それに加えて、高温で炒める、油通しをするっていう、家庭では絶対作れない工程によって生まれる食感をメインに持ってこないと駄目だなっていうのはわかっています。
― 外食のための中華ですね。
福島 ただの炒めものではなく、肉に油通しをして、野菜は野菜で強火でさっと炒めて、油通しした肉と、サッと煽った野菜にタレを絡めてできたての熱々を出す、その香りと味を食べるっていうような。家庭では絶対に作れない“技”をメインにしたものがいいんじゃないかと考えてはいます。
あとは、今日出た話のように新しい香りですかね。青山椒油でもそうですけど、油に特徴を持たせるというか。香辛料だけだとちょっと重たいので、最後に入れる仕上げ油に、フレーバーのある油を入れるとかね。どちらかというと、今までの大衆中華って仕上げ油がごま油だけだったような気がするんですよ。最後の仕上げに入れている油の種類があまりにも少なすぎる。
もっと鶏油を入れたり、ネギ油を入れるというような工夫がなかったのが、バーミヤンとしては反省点でもあります。そういうところにこれから力を入れていくことで、コストはそんなに上がらないんだけど、食べた時に「今までとは違う」っていう感じを出せたらいいかなとは思っています。
古川 高温の油で炒めた時、油通しした時に出る、油とセットになった調理香みたいなものが、外食店で食べるものと、家で調理できるものとの最も大きな差だと思います。
福島 まったく違うところですよね。
古川 おっしゃるように、ネギ油のような基本的なものでも、入れたら香りがね、ふわっと入るような。
福島 入ってると、今までと違う、家ではこんなの食べたことない、というような味になってるような気がするんですよね。
Text 佐藤貴子(ことばデザイン)
人物撮影 林正
料理撮影 西田伸夫+80C編集室