「食べるなら本場で…!」そんな好奇心と熱意で蘭州へ飛び、蘭州拉麺(らんしゅうラーメン)食べ比べの旅に出た、80C(ハオチー)特派員のマサラ。
日本で蘭州拉麺の火付け役となった「馬子禄(マーズルー)牛肉面」本店の麺と、基本的な注文方法は前回をご覧いただくとして、今回は蘭州っ子に人気の店が三役そろい踏み!
蓬灰鹹水のこだわり麺!7種類の麺を打ち分ける「塔山半坡」
蘭州牛肉拉麺行業協会によると、中国全土に35,000店、蘭州市だけで1,500店あると言われる蘭州拉麺。麺店だけに、気取らぬ大陸的な店が多い印象ですが、実は洒落た店もあるんです。
「塔山半坡牛肉面(ターシャンバンポォニュウロウミィェン)」もそんな店のひとつ。カフェのようなあか抜けた雰囲気があり、テラスでお茶を飲んでくつろぐことも可能。
スタッフも若くて活気があり、入店するやいなや「ようこそ塔山半坡へ!」と元気よく挨拶してくれるのも今風ですが、実は三代代続く老舗の牛肉麺店。老舗も進化し続けているんですね。
こちらのウリは、昔ながらの蓬灰(ポンフゥイ)から作った天然鹹水を生地に使っていること。牛肉を煮る鍋には、蘭州で初めて全銅製の鍋を採用するなど、随所にこだわりを感じます。
ちなみに前回、蘭州拉麺の麺は太さや形によって10種類に分類されると書きましたが、何店も行ってみると、太さの基準を掲げている店はあまりありません。
また、中が空洞になった麺など、高度な技術を要する難しい形もあり、実際に一蘭州拉麺店で提供されている麺の形は10種類もない印象。
その点「塔山半坡牛肉面」では、麺の太さを7種類から選ぶことができ、種類も壁に書いてあるので、旅行者にも親切だと感じました。
全体のバランスが秀逸!おかずもお土産も充実
こちらでいただいたのは、「牛肉面(ニュウロウミィェン)」と「涼面(リャンミィェン)」各7元。「牛肉面」の麺は「馬子禄牛肉面」よりやや柔らかく、最後の方は少しベタつく感じでしたが、スープはコクがあってしっかりとした味わいです。
よかったのは、ラー油がたっぷり入っていてもスープの味を邪魔していなかったこと。それだけ全体のバランスを考えて作られているということでしょう。トッピングの牛肉は、ここでもスープにくぐらせるのがおすすめです。
もう一皿、「涼面」は、韮葉の平打ち麵を頼んでみました。これがかなりのボリュームで、日本だったら大盛ですね。たっぷりと入った刻みニンニクは食欲を刺激し、卓上の黒酢をかけるとさっぱりとして美味。こちらは汁なしなので、麺がベタつかないのもよかったです。
小菜コーナーも充実しており、ラーメンだけでは不足しがちな野菜をたっぷとれるのも嬉しいポイント。
おみやげコーナーもあり、私は「秘制油泼辣子」を購入。油泼辣子とは、ラー油の原料となる香辛料まで入った辣油のこと。新疆大板椒、陝西線椒、貴州朝天椒の3種をブレンドしているそう。化学調味料の類は入っていないので、純粋なラー油の味を楽しめます。
食後は三泡台でほっとひと息。バルコニーでくつろぎを
さらにこの店のおすすめは2階のバルコニー席です。私は食事の後、ここで蘭州名物のお茶・三泡台(サンパオタイ)をいただきました。
三泡台とは、蓋、茶碗、茶托から成るいわゆる蓋碗茶のこと。緑茶をベースに、クコの実、桂圓、棗、氷砂糖が入っており、好みで干し葡萄や干し杏などのドライフルーツ、クルミ、バラの花などを加えます。
八宝茶にも似ていますが、ドライフルーツがふんだんに入り、フルーティーな香りが立ち上るのは三泡台ならでは。市内のスーパーでもいろんな種類の三泡台が売っていますので、蘭州に来たら、ぜひ蘭州拉麺とともに味わってみてください。
塔山半坡牛肉面(ターシャンバンポォ ニュウロウミィェン) 住所:文化宫北园59号 営業時間:8:00~17:00 メニュー:牛肉面(7元)、涼面(7元)、醤牛肉(7元 ※トッピング)、三泡台(15元) |
蘭州一の人気店「磨沟沿」は心意気もNO.1!
続いて訪れたのは、「老字号(老舗)を名乗る店の中で一番おいしい」「蘭州の1店舗でしか牛肉面を食べられないのなら絶対にここを選ぶ!」と、蘭州っ子に大人気の牛肉面館。
現地で食べ比べしている中国人のブログなどを見ても、ここ「磨沟沿老字号牛肉面(ムォゴウイェン ラオズーハオ ニュウロウミィェン)」をトップに持ってくる人が圧倒的多数でした。
訪れてみると、店内は終始大混雑。観光客らしき人が多い「馬子禄牛肉面」と違い、毎朝食べに来ているような、地元民らしき人の方が多いように感じます。
同店の創業は1977年。1999年に文化宮に現在の本店を開業し、蘭州市内に3店舗を構えていますが、どの店舗も毎日行列が絶えないそう。
麺は「牛肉面」のほか、「凉面」「炸酱面」「卤面」「炒面」「干拌」など全部で8種類を提供しています。
麺もスープも大根も、牛肉に至るまでレベルが違う!
気になる「牛肉面」ですが、さすがは地元で一番の人気店。麺、スープ、大根の煮え具合など、すべてが先の2軒を超えてきましたよ。麺はしっかりとコシがあり、柔らかすぎず、ベタつかず。
「馬子禄牛肉面」では、ゆで残った太さの違う麺が混ざっていたりもしましたが、ここではそんなこともなし。スープは極めてクリアで、牛骨の力強いコクを感じます。大根はガラスのような透明感。これは食べる芸術と言っても過言ではない…!
さらに特筆すべきはトッピングの牛肉。他店と違ってそのまま食べてもしっとりしているんです。しかも煮汁のスパイスがしっかり染みておいしいのなんの。
レジの横で肉を受け取るときは、脂身が多めか少なめかを選ぶこともでき、私は半々くらいでオーダー。脂身の部分を熱いスープにくぐらせると、とろけるような食感がたまりません。
牛肉は真空パックでお持ち帰りも可能。店に来て、牛肉だけ買って帰る人も多く見られました。
クリーンな厨房で真剣勝負の麺打ち!サービス精神も満点
さらにこの店ではうれしいサプライズが。食後に遠くから厨房の写真を撮っていたら、麺職人のお兄さんが「中に入って撮っていいよ!」と招き入れてくれたのです。
麺づくりの現場は3人がかり。1人がこね、1人が1人前ずつ小分けにし、1人が麺を打って伸ばす共同作業で、どれも非常に体力のいる力仕事。
特に生地をこねるのは、地味な作業ながら一番の重労働。ここで失敗すると麺打ちがスムーズできないことを思うと、最も重要な役割ですね。
さらにスープを作っているお兄さんも「さ、中に入って写真撮って!」とウェルカムモード。豪快に煮込まれている牛肉の塊はド迫力!
私のようなただの客に写真を撮らせたりして大丈夫なのかしら?とも思いましたが、自分たちの技を誇りに思っているからこそできるのでしょうね。快く見せていただきありがたかったです。そして、あんなに忙しい厨房なのに、とても清潔なことにも驚きました。
味はもちろん、そこで働く人たちの心意気もすばらしい。地元民がこぞってこの店を絶賛する気持ちがわかりました。
磨沟沿老字号牛肉面(ムォゴウイェン ラオズーハオ ニュウロウミィェン) 住所:七里河区西津东路磨沟沿46号 ※「塔山半坡牛肉麺」と川を挟んだ斜め向かいにあります。 営業時間:6:00~15:00 メニュー:牛肉面(7元)、涼面(7元)、酱牛肉(7元/1両:50ℊ)など |
田舎町で大行列!蘭州郊外の人気店「陳記」は博多ラーメン風味?
蘭州市の中心地からバスに乗り、蘭州西駅を通り過ぎてさらに郊外へ。1時間ほどバスに揺られ、車窓から見える景色もだいぶ寂しくなってきなぁ…というところで忽然と現れるのがこちらの店。バスの中から行列が見えるので、店の場所はすぐわかります。
ここ「陳記清湯牛肉面」があるのは蘭州駅から20㎞も離れた辺鄙な場所。にも関わらず、地元蘭州市では「磨沟沿老字号牛肉面」と1、2を争うほどの人気ぶりなんだそう。
事前にチェックした写真は、どう見ても田舎町によくある牛肉面店。それが蘭州一と言われる店と肩を並べ、連日外まで行列が溢れているとは、いったいどれだけのものなのか…?否が応でも期待が高まっちゃうじゃないですか。
さっそく行ってみると、店内はそれほど広くないため常に満席状態の模様。どおりで牛肉面を外で立ち食い、しゃがみ食いしている人が多いわけです。
麺の味わいは唯一無二!食べれば食べるほどクセになる
さて実食。ひと口、麺をすすって目を見開きました。明らかに今まで食べた3軒と“麺”の味が違います。香りが強いというかなんというか…。強いて言えば博多ラーメン、あの麺に似たような風味です。あれほど硬くはありませんが、コシもしっかり。
思えばこれまで食べてきた牛肉面は、スープに絡ませた麺の食感を楽しむという感じだったのに対し、こちらの牛肉面は麺自体の風味も強いのです。
また、ここではトッピング用の牛肉を最初から麺の上にのせて出すスタイル。ほどよく脂身もついているので、しっとりしていてとてもおいしかったです。
これは店の外まで行列できるのも納得の味。もし、蘭州拉麺のために蘭州市を訪れる方がいらしたら、ぜひここは訪れてみてください。恐らく蘭州の中心地に店があったら、間違いなく一番になるだろうと思うほど、好みの牛肉面でした!
陈记清汤牛肉面(陳記清湯牛肉面:チェンジ― チンタン ニュウロウミィェン) 住所:西固东路158号 営業時間:6:00~14:00 メニュー:牛肉面(7元)、酱牛肉(7元)など |
3つの個性派蘭州拉麺を平らげたところで、次回はさらなる蘭州拉麺を求めて再び街中へ。いよいよ蘭州拉麺 in 蘭州の総集編です!
続けて読みたい>本場で蘭州拉麺食べ比べ②|蘭州拉麺 in 蘭州 激辛編&勝手にランキング
text & photo マサラ
参考サイト
兰州牛肉拉面行业协会(蘭州牛肉拉麺行業協会)
风闻(風聞)