絢爛豪華!プレゼンテーションを重視した「知味観」夜の宴
夜の宴席会場は老舗「知味観」の中でも高級店にあたる「知味観 味庄 楊公堤店」です。1913年に創業した同店のルーツは、なんとワンタンの屋台。現在は杭州市内に高級店、大衆料理、麺専門店などを構えるほか、上海などの大都市にも支店がある杭州料理の大規模チェーンに成長。今では杭州を代表するレストランブランドとなっています。

夜は昼の伝統料理とうって変わって、モニターやパフォーマンスも取り入れたイベントスタイル。若手の料理長が現代的なセンスを取り入れた、華やかな宴席です。

例えば、杭州を代表する料理のひとつ、河エビと龍井茶の炒めもの(龍井蝦仁)も、ここではモダンな仕立てになっていました。

元来この料理は、河エビと龍井茶の茶葉を炒め、淡い茶の香りとあっさりとした河エビの香りを楽しむもの。ここでは龍井茶の茶葉を象った極小の小麦粉細工が入っており、龍井茶を添えて提供するスタイルで登場です。
この小麦粉細工は、今では茶葉の葉脈がでるような専用の型を使って作りますが、15年くらい前に見たときは、点心師がひとつひとつ手作りしていて、本当に驚いたものです。
また、ライチの中にえび団子を詰めて揚げた点心も立体的な盛り付けが印象的。ライチの皮を模しているのは赤い脆米(ツイミー)。サクサクの食感で、日本のあられにも似たものです。最近の中国では、このように新たな見た目や食感を作り出す食材が次々と生まれています。
さらに、最近流行の料理も登場しました。東シナ海沿岸部で好まれる小黄魚(シャオホァンユィ:小型のフウセイ)に、にんにく、生姜、エシャロットを合わせ、酒を入れて土鍋で蒸し焼きした料理です。この調理法は、食材の“鮮味(うまみ)”を味わうものとして、徐々に浸透してきています。

パフォーマンスで目を惹いたのは、皆の前で作り上げた龍髭麺(ロンシューミェン)。小麦粉の生地を何度も巻き付けて延ばし、龍のひげのように細く長く手延べした麺で、点心師の仕事の中でも非常に高度な技術を要します。

1本1本は素麺よりもずっと細く、針に通す糸と変わらないくらい。ここまで細いと、ゆでたときに溶けてしまうため、揚げて砂糖やきな粉をかけて食べることが多いです。

蒸しスープは、卓上で香りが立つパフォーマンスで提供されました。メインの素材は鰻、塩豚、杏。蓮の葉で蓋をして器ごと蒸し、客席で蓋を開けるとふわりと蓮の葉が香ります。表面に浮いている黄色い油は鶏の油です。


最後にご紹介したいのが蟹醸橙(シエニィァンチョン|蟹酿橙)。これは南宋の文人・林洪が『山家清供』で紹介している伝統料理で、南條先生の『中華満喫』でも紹介されていたものです。

本来は、秋に旬を迎えた上海蟹で作りますが、この日は6月ということもあり、「六月黄(旧暦の6月頃に出回る若蟹)を使用。作り方は蟹の身と生姜を炒め、香雪酒(こうせつしゅ:紹興酒の中でも最も甘いタイプ)で香り付けした餡を柑橘釜に詰めて蒸し上げます。
この料理は蟹の卵と菊の花も必ず入れるのがポイント。紹興酒をしっかり使った甘さとうまみに、柑橘の爽やかな余韻が続く、美しい味わいでした。

推し活の旅、宿願成就。さらに食の旅は続きます
昼は西湖を望む宴会場で、これ以上ないほど安定感抜群の伝統料理。夜は華やかな演出と進化した料理を楽しむ宴席料理。それぞれに趣向を変えて開かれた杭州料理の宴を存分に満喫したのはいうまでもありません。
そう、冒頭で熱く語らせていただいた胡忠英さんには、ついにお目にかかることができました。胡さんは、僕が心の師と仰ぐ傅月良さん(胡さんの孫弟子)から伝え聞き、既に僕のことを知っており、会うなり「君が山口くんか?」と声をかけてくれたのです。

欲を言えば、コックコートを来た胡忠英さんに会いたかったですが、この日は宿願が成就し、とびきりの思い出ができた1日に。その喜びを胸に、あくる日、心の師匠の店「如院」を訪れました。次回はその体験をお伝えできればと思います。お楽しみに!
語り:山口祐介
聞き手・執筆・写真:サトタカ(佐藤貴子)








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