横浜中華街に行ったら、どこで何を食べればいい? 魂が震える本物の味はどこにある…? 当連載は、横浜で美味を求める読者に向けた横浜中華指南。伝統に培われた横浜の味と文化をご紹介します。
◆目指すゴールとコンセプトはコチラ(1回目の連載)でご覧ください。

 

立春とは名ばかりで、寒い日が続きますね。筆者は風邪気味で部屋に籠りがちですが、横浜中華街に向かう知人の投稿を見ると、何を食べるんだろう?と、つい予想してしまいます。

(元町を歩いて、「港の見える丘公園」を散歩して、ランチのピークを過ぎた頃、中華街に着いて…となると、ホカホカの肉まんの蒸気も惹かれるが、あれはお土産に持って帰りたい。本格的な四川料理は、食べた後に汗をかくので、今は逆に寒く感じる。汁麺は昨日ランチで食べちゃった。さて…)

そんな想像の末、今の時期にぴったりだと思ったのが、やさしく胃袋を温めてくれる中華粥。そこで今回は、中華粥をさらにおいしく食べるための3つのルートを考えてみました。

サイクリストにおすすめ!早朝営業で朝ごはんにぴったり「馬さんの店 龍仙 本館」の「龍仙粥」

まず、最初の“お粥ルート”は、自転車で中華街へアクセスする道のりです。

筆者はサイクリストでもあるのですが、2月は東京から三浦半島に向かうツーリングがおすすめ。目的は市場に出回る新わかめです。都内の家から三浦までは往復100kmくらいなので、昼は三浦三崎のマグロ丼で決まり。狙うは朝の横浜中華街、おいしいお粥で胃袋を満たせば、走りにも力が入ります。

まずは最低限のエネルギー源をお腹に入れてから自宅を出発、多摩川を超えて横浜へ。国道1号線は案外アップダウンがありますので、朝からいい運動になること間違いなし。横浜駅を過ぎたらみなとみらいを通過して、日本大通りを抜ければ最初の休憩地点、横浜中華街です。

ある日の朝の横浜中華街。

朝の中華街は、水産業者のトラックや、食材納品の台車などが走り回り、我々のような外部の者が営業時間中に見る風景とは違っているのが新鮮です。

横浜スタジアム方面から加賀町警察署の前を抜ければ、ほどなく目的地の「馬さんの店 龍仙 本館」に到着します。

「馬さんの店 龍仙 本館」早朝から深夜まで営業時間が長いのも助かります。

ここでは店名を冠した「龍仙粥」をオーダーしましょう。ちょっと提供までに時間がかかるのは、朝イチで海鮮と揚げワンタンを準備しているからでしょうか。お碗にレンゲを入れると、ホタテ、海老、イカと魚の身がごろごろっと出てきます。

「龍仙粥」で朝からパワー注入!

また、お粥にはやっぱり揚げものの香ばしさがあるとさらに食欲が増しますね。浸った揚げワンタンほどよく緩み、油がお粥の味に力を与えています。どこか家庭的で大味なところがありますが、それがまた「食べた気」がしていいんですね。

ちなみに大田区の家から「馬さんの店 龍仙 本館」までは小1時間。自転車で乗りつければ、きっと電車で来て食べるより、おいしく感じるに違いありません。

モツの旨い店にハズレなし。香港路の老舗「安記」の「モツ粥」

2番目の“お粥ルート”は、仕事絡みで神奈川方面にアポイントがある場合。午前中に神奈川方面で打ち合わせを済ませ、わくわくしながら石川町駅を降りてランチに向かいます。

場所は、夏のスタミナ麺でご紹介した、香港路「海員閣」の対面にある「安記」。ここのモツは味がしっかりしていておいしいんですよ。

「安記」外観。右側の外看板に粥メニューが出ています。

「安記」には、横浜中華街で育った老華僑で、食べ歩き仲間の若旦那からいい話を聞いています。時代は中華街の大店が羽振り良かった40年前。若旦那が小学生の頃、誕生祝いとして御尊父に頼み込み、大好きな「安記」のモツ皿を食べ放題にしてもらったのだとか。完食したのはなんと30皿以上。子どもがうまいという店に間違いはありません。そしてモツが美味い店に料理のハズレなし。

ちなみに、横浜中華街には美味しい店を見分けるためのサインがいくつかあります。「オーナーシェフの店」先月の春節特集で紹介しましたが、「モツ推しの店」「巻揚がメニューにある店」「水曜休みの店(横浜市中央卸売市場と同じ休日)」もそのひとつ。「安記」はこのサインで見ると、すべてを満たしている店なのです。

貫禄さえ感じる入口をくぐって店に入ると、お姐さんたちが温かく迎えてくれ、仕事の合間にほっと一息。古き良き町中華の佇まいの中にも、中華街らしく道教の祭壇が祀られており、華人の地域にトリップしたような感覚も味わえます。

もちろん粥はモツ粥でキマリ。こちらのお粥は横浜中華街の中でもあっさり薄味で、綺麗にお米が砕けたサラサラタイプ。牛モツ(ハチノス)を前歯でジワリと受け止めて、くにくにした食感を楽しみながら、ぷつんと切れる瞬間がたまりません。

牛モツが減ってきたころ、途中で味を変えるために、お粥に添えられたネギ醤油を投入しましょう。風味が変わって、さらにレンゲが進むようになります。

「安記」のモツ粥。

そして最強の合いの手が、巻揚(まきあげ)かシウマイです。巻揚は古き良き広東料理の代表的な点心。香港の友人曰く、網脂で巻く昔ながらの巻揚は今はほぼ見ないそうですが、ここ「安記」なら、ハーフサイズでもオーダーできるのです。

「安記」の巻揚ハーフサイズ。

たけのこのシャキシャキ感、ネギの甘み、海老の旨み、そしてサクサクに仕上がった網脂がひとつになった巻揚をかじりながら、お粥の着丼を待てば気分は上々。シウマイは大振りな横浜の標準サイズで、肉肉しさがたまりません。

「安記」手作りの「シウマイ」。

お腹が落ち着いてきたら、お茶をいただきながら店の雰囲気に浸るのもいいものです。ホールのおばあちゃん、おばちゃんの接客を見ていると、筆者が子供時代に家族で通っていた「海南飯店」を思い出しますね。老舗の閉店が続く横浜中華街ですが、いつまでも続くといいなと願う店のひとつです。

女将さんの明るさも栄養に。平日の仕事上がりに1人粥が沁みる「謝甜記 本店」

そして3つ目の“お粥ルート”は平日の夜。休日の昼間に行列ができている店は、急いでいるとつい素通りしがちです。そんな店のひとつが「謝甜記 本店」。お粥というと、朝か昼の印象があるからか、実はこの店、平日の夜が狙い目なのです。

「謝甜記本店」の外観。「オカユヤ」の文字に昭和を感じます。

横浜中華街は、老舗の大店でも中華そば1杯だけでも歓迎してくれる店ばかりですが、豪華な宴会を横目に、いろいろと考え事をしながら一人飯はつらいもの。そんな時、ここはギラギラした中華街大通りの数少ないオアシスですね。店は「謝甜記 貳号店」のほうが大きいのですが、本店が空いていたら、入らない理由はありません。

店は大衆的な町中華といった雰囲気で、どなたでもウェルカムといった懐の深さを感じます。横浜中華街の中でも明るめ照明のホールを仕切るのは、筆者と同じくらいの年齢に見える女将さん。彼女が常連さんとテンポよく掛け合いをしており、明るい雰囲気が満ち溢れています。

「謝甜記 本店」の「牛肚粥」(もつ粥)。

私が注文するのは、やっぱり牛肚粥(もつ粥)。今回ご紹介した3店舗の中で、お米がもっちりとして、最も味がしっかりとしているのがこちらのお粥。干し貝柱など旨みのでる乾物も多めに入っているのではないでしょうか。一口ごとに深い味わいを感じます。

素人には真似のできないお粥の味はさすが専門店ですが、女将さんの明るい雰囲気が仕事帰りも唯一無二の味わい。筆者が訪れた日も、かなり人生の大先輩と見受けられるご夫婦や、仕事帰りのサラリーマン、女性のおひとりさまなど、いろんな方が寛いだ雰囲気で晩ごはんを楽しんでいました。

この日は本業の仕事で心がちょっとすり減っていたのですが、わずかお粥一杯でもほっと心まで明るくなり、わざわざ横浜中華街まで来てよかったなと思いました。


文中でご紹介した店

馬さんの店 龍仙 本館(まーさんのみせ りゅうせん ほんかん)
住所:神奈川県横浜市中区山下町218-5(MAP
※長安道
TEL:045-651-0758
営業時間:7:00~深夜(店頭の看板では~AM3:00)
無休

安記(あんき)
住所:神奈川県横浜市中区山下町147(MAP
※香港路
TEL:045-641-3150
営業時間:朝昼9:30~14:00 夜17:00~20:00
水曜定休

謝甜記 本店(しゃてんき ほんてん)
住所:神奈川県横浜市中区山下町165(MAP
※中華街大通り
TEL:045-641-0779
営業時間:平日10:00~15:30 16:30~20:30 土曜9:00~21:30 日祝9:00~20:30
火曜定休


text & photo:ぴーたん
ライフワークのアジア樹林文化の研究の一環として、台湾・中国・ベトナム・マレーシアを回って飲食文化も研究。10数年前の勤務先で、江西省井岡山に片道切符で送り込まれたことを機に、中国料理の魅力に目覚め、会社を辞めて北京に自費留学。帰国後もオーセンティックな中国料理を求めて、横浜をはじめ、アジア各国の華僑と美味しいものについて情報交換をしている。

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