台湾旅行に行ったら食べたいものとして、真っ先に挙げられる小籠包。薄い皮の中に熱々のスープがたぷたぷに入っていて、見るからにそそられますよね。
日本でも食べられる店はたくさんありますが、台湾で食べる極薄皮の小籠包はまた格別です。今回はそんな小籠包の基礎知識、そして都内近郊で食べれられるおすすめの台湾式小籠包、小籠包づくり教室に迫ります。
小籠包とはなにか?なぜスープを包めるのか?
そもそも小籠包とは何でしょうか? ここで定義するなら、小麦粉で作った生地でスープを加えた肉餡を包み込み、小さな蒸篭で蒸して調理する点心をいいます。
最もベーシックな小籠包は、豚肉の餡を包んだもの。専門店では、餡にエビやナマコなどの海鮮を入れたり、ヘチマが入ったものなどもよく見ます。
皮で餡を包むという点では、肉包(肉まん)と一緒ですが、肉包と大きく異なるのは、餡だけでなくスープもたっぷり包まれていること。その秘密はゼラチンにあります。
どういうことかというと、一般的な肉まんの場合、挽肉を練った餡を包みますが、小籠包はスープをゼラチンで固めてゼリー状にし、豚ひき肉に混ぜ合わせて餡にするのです。
そうすると、蒸したときにゼラチンが溶け、皮の中に餡と一緒に熱々のスープがたっぷり蓄えられる…というわけです。最初にこの作り方を考えた点心師は天才ですね!
薄皮でスープがたっぷり入った小籠包のルーツはどこ?
小籠包のルーツは諸説ありますが、薄皮の中に餡とスープたっぷりのスタイルは、清代の道光年間(1821~1850年)、江南地方に位置する江蘇省、浙江省あたりで生まれたのではないかと言われています。
事実、この地方には灌湯包(グァンタンバオ)、小籠湯包(シャオロンタンバオ)、湯包(タンバオ)などと呼ばれる、小籠包と同様の形の点心が名物になっているところが多くあります。例えば、江蘇省南京の湯包や、杭州の小籠包は有名ですね。
また、100年以上前に上海市嘉定区南翔鎮で生まれた「南翔饅頭店」は、いまや上海だけでなく、世界中に知られている上海小籠包の名店。日本にも支店があるので、知っている方もいることでしょう。
台湾と大陸の小籠包は同じもの?
では、台湾の小籠包はいつごろ生まれたのでしょうか。歴史を振り返ると、台湾で名高い小籠包の名店の多くは、外省人(台湾に移住してきた大陸の人々)の手から生まれているようです。
例えば、誰もが知る「鼎泰豐(ディンタイフォン)」は、山西省出身の楊秉彝氏が油問屋の副業で小籠包を売り始めたのがきっかけです。
また「點水樓」の創業者である陳飛龍氏は両親ともに華僑であり、香港に生まれ、上海に育ち、1949年以降に台湾に移り住んでいます。
この点を鑑みると、小籠包は1949年以降に中国大陸から持ち込まれたのではないかと考えられます。
台湾小籠包らしさはどこにある?
しかし、大陸と台湾の小籠包が同じかというと、一概にそうとはいえません。特に台湾の小籠包は、大陸よりもいっそう薄い皮が特徴ではないかと思います。
台湾出身で、中国でも暮らした経験のある「吉祥天」の邱シェフにも聞いてみると、やはり「餡に大きな違いはなく、皮がとにかく薄いのが台湾式と言えるのではないか」とのこと。
たしかに、箸で小籠包のてっぺんをそっと摘まんで持ち上げると、スープがタプタプする極薄の皮の小籠包に台湾を感じますね。
小籠包だからといって薄皮とは限らない?
一方で、同じ小籠包という名前であっても、必ずしも同じ形状や食感の料理ではないのが中華料理の難しいところでもあり、面白いところです。
例えば、肉まんの皮と同じような厚めの発酵生地で、スープたっぷりの餡を包んだ点心もまた、小籠包や小籠湯包などと呼ばれます。それはいったいなぜなのでしょうか?
推測するに、小籠包という言葉は、小さい蒸篭(籠)に入った包子(包)という意味です。巨大な蒸篭ではなく、1人前にちょうどいい大きさの蒸篭に餡を包んだ点心が入っていれば、生地の状態がなんであれ、小籠包と解釈できます。
また、必ずしもそうとは限りませんが、朝ごはんを食べるような小さなお店の場合、皮がそこそこ厚かったり、ミニ肉まんのような小籠包に出会う確率が上がります。
こうした小籠包との出会いも旅の醍醐味ですが、「想像していた薄皮の小籠包と違った!」となりたくない方は、店の情報をあらかじめ画像でチェックしておくといいですね。
さて、小籠包の基礎知識がわかったところで、次のページでは、日本で薄皮の台湾式小籠包を食べられるおすすめの店をご紹介します!