世の中にあるゼリーの多くは、湯にゼラチンや寒天などを加えて固めている。お菓子づくりの本に載っているのは、ほとんどこの作り方だ。
かたや中華圏には、冷水の中で植物の種子を揉み出して固める、限りなくふるふるのゼリーも広く親しまれている。どういうことかというと、こういうことだ。
布などに種子を包み、水の中でもみもみすると、水が徐々にどぅわんどぅわん!とゲル化していくのだ。ゼラチンや寒天に慣れ親しんだ人にとっては、ちょっとおもしろい食べものに見えるかもしれない。
この、もみもみ系ゼリーの代表格は2つある。
まずひとつは愛玉子(オーギョーチィ)だ。愛玉凍とも呼ばれ、レモンシロップなどでいただく爽やかなスイーツで、台湾好きにはもはや説明不要だろう。80C(ハオチー)ではこちらの記事でもしっかりご紹介している。
特に近年、その名を広く知られるきっかけとなったのが、NHK朝の連続テレビ小説『らんまん』である。主人公のモデルとなった牧野富太郎博士が、愛玉子の原料となる植物の学名の名付け親になったエピソードが、ドラマで紹介されたからだ。
そして、もうひとつが今回の主役、冰粉(ビンフェン)である。
冰粉(ビンフェン)は、四川料理店や麻辣火鍋店の増加とともに、少しずつ日本でも食べられる場が増えている。暑い日に食べると水を飲むより爽快。なんなら、水より飲める。
愛玉子と冰粉は、種子を水中で揉むという作り方も、ふるふるの食感も非常に似ている。
しかし、作り方で決定的に違う点がある。それは、愛玉子は水の中で種子を揉むだけで固まるが、冰粉はそれ単独では固まらないという点だ。
では、どうやって冰粉を固めるのだろう? 次のページでご紹介しよう。