今回の会場は池袋の名店・ 華湘(かしょう)。湖南料理を五七五で味わいます。
春近し蜂蜜色の中華火腿
おいしい記憶を写真ではなく、句にしたためる。ただ食べるだけでなく、料理をことばで味わう。円卓の上の中華料理や食材を季語に代え、五七五で一句詠み合う、ちょいと粋な遊びが「中華句会」です。
第1回「神楽坂 ルウロン編」をご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、知らない者同士でも「中華」という共通のキーワードで円卓を囲むと、意外と会話に困らないのも「中華句会」の魅力。句会では自身の性格もにじみ出るので「句コン」にもぴったりかと思います。
それはさておき、今回の会場は中華の聖地・池袋。池袋東武スパイス15階にある「中国湖南料理 華湘(かしょう)」。こちらは日本では珍しい湖南省の料理が食べられる店です。その前に、まずは湖南省の位置をご確認ください。
(クリックで地図拡大) 湖南省の略称は「湘」。省内を流れる湘江にちなんだ呼称で、「華湘」の名前の由来でもあります。
場所としては、広東省の北、重慶市の東というとわかりやすいかもしれませんね。また、省内には洞庭湖や、長江右岸の支流・湘江が流れており、淡水魚の料理が充実しているのも特徴的。代表的な料理をひとつ挙げるなら、魚の頭を辛くて酸っぱい唐辛子の漬物で煮込んだ「剁椒魚頭」でしょう。
剁椒魚頭(ドゥォジャオユートウ)。四川料理の辛さに「麻辣」という表現が使われますが、同じ辛い料理の中でも、湖南料理は激辛と酸味が織り成す「酸辣」味が特徴のひとつとなっています。
そして湖南省といえば、映画『アバター』の美しく幻想的な大自然のモデルになったといわれる「武陵源(ぶりょうげん)」がある場所としても有名。中でもこの「南天一柱」が「ハレルヤマウンテン」だと言われているんです。
映画『アバター』のハレルヤマウンテンのモデルになったとされる南天一柱。
そんな内陸地でもありますから、鳩、鶏、豚をはじめ、肉料理のバリエーションも豊富。かの毛沢東は湖南省出身であることから「毛家菜(マオジアツァイ/ máo jiā cài)」という呼び名もあるほどで、現在は中国各地の大都市や、台湾でも親しまれる料理となっています。
毛沢東(マオゼェァドン)
さて、湖南省マメ知識はこのくらいとして、本日円卓を囲む俳人をご紹介しましょう。
前回より続投の3名に、初参加が3名です。
漁太(りょうた)
紙媒体から電子書籍まで手がけるデザイナー。句歴1年、28歳という若さながら、深大寺俳句会で受賞経験を持つ。旧正月には中国人が経営するマッサージ屋に行き、そこで出される餃子を味わうのが恒例行事。中華句会初参加。
大盛ぴざ子
都内病院勤務の医師。年に一度の香港旅行で最も印象的な中華は「北京酒樓」の賽螃蟹(魚の白身と卵白の炒め物)。俳句は1年前に始めたばかりだが、今や5つの句会を掛け持ちする多忙な俳人。中華句会初参加。
まりも
航空会社勤務。職業柄、世界の中華街を訪れた経験を持つ。中でもお気に入りはマンハッタンのアジアともいえる、ニューヨークのチャイナタウン。好きな中華は飲茶全般、小籠包。今回が初句会。
木杓(きしゃく)
中華食材販売会社に勤務し、中国貧乏旅行を愛するブラジリアン柔術家。「ひる中華」のテリトリーは江戸川・葛飾・中央区。今や小岩の中華を語らせたら右に出るものはいない(かも)。中華句会は二度目の参加。
泥頭(でいず)
出版社勤務。俳句結社「炎環」に所属しつつ、自らも「ぶりかま句会」を主宰する。中華料理の原体験は、郷里の大阪高槻市にある「へんこつ飯店」の天津飯。「王将のある街はいい街」が持論で、関西風の天津飯を愛す。
こばら
80C(ハオチー)編集部。食、旅、地域おこし等のコンテンツ企画制作会社主宰。中華の取材や執筆を始めて足掛け10数年、最近の研究テーマは中国伝統発酵生地「老麺」。約2年の句歴の中で、中華句会を思いつく。
菜譜(本日のお品書き)
こちらのメニューを考えてくださったのは、同店で総料理長を務める秦由弘さん。伝統的な湖南料理の担い手であり、ジュニア野菜ソムリエの資格を持つ秦さんには、オーソドックスな湖南料理とともに、野菜の魅力が際立つお料理をリクエストしてみました。
ではさっそく、前菜から行ってみましょう!
≫中華句会の遊び方
≫第1回中華句会「チャイニーズテラス ルウロン」編
Text:佐藤貴子(ことばデザイン)
Photo:佐藤貴子(ことばデザイン)、小杉勉