シンプルにして美味豪快!農家楽で天台山の恵みを食べる

ビール鶏や笋茄、地酒に加えて、農家楽で外せないのが新鮮な野菜を使った料理です。まずは前菜から「拍黄瓜(叩ききゅうりの冷菜)」。まあ、どこにでもある料理ですよ。でも、ここの拍黄瓜は鶏料理より好きだ!と断言できます。

元パティシエだったシェフのお姉さんがササッと手際よく作ってくれて、調味料は醤油、黒酢、砂糖、ごま油、薬味に香菜と揚げピーナッツ。これがシンプルでうまい!ここに来たら僕たちが必ず注文する一品です。

拍黄瓜(叩ききゅうりの冷菜)

続いては「皮蛋豆腐」。これもなんてことのない見たまんまの前菜なのですが、うまいんです。

皮蛋豆腐(ピータン豆腐)

椒塩玉米餅(トウモロコシ粉の煎餅 山椒塩風味)」は見た目からしてクリスピーでそそる一皿。薄い生地を揚げた後、にんにく、ねぎ、唐辛子乾煎りしてまぶしていて、おつまみにぴったり。

椒塩玉米餅(トウモロコシ粉の煎餅 山椒塩風味)

清流のある地域でおなじみのタニシ料理。タニシを水、ラード、生醤(中国の濃口醤油)で煮た「焼螺絲(タニシの煮もの)」もあります。加えているのはにんにく、生姜、唐辛子。チュッと吸えば酒の肴に最高!

焼螺絲(タニシの煮もの)

韮黄炒土鶏蛋(ニラと地鶏の卵炒め)」のような豪快な炒めものも農家楽ならでは。黄ニラは日本の二倍くらい長く太く、卵は薄い黄色の卵黄を持った地鶏の卵です。ラードでしっかりと炒め上げます。

韮黄炒土鶏蛋(ニラと地鶏の卵炒め)

天台名物としてご紹介した笋茄(スゥンチェ)の料理も外せません。こちらは醤油味で煮込んだ「焼笋茄(干し筍の煮もの)」。食べると中の方がとろっとしており、他にはない食感です。タケノコなのに茄子の漢字が使われているのは、やはり食感が似ているからなのかな、と思えてきます。

焼笋茄(干し筍の煮もの)。あらかじめ大量に煮込んであるものを、食べる直前に温めて提供。

こちらは「油燜茄子(茄子のとろ火煮込み)」。同じ調理法の場合、日本の茄子は油通ししないと皮の食感がイマイチですが、こちらの長茄子はいきなり炒めてもトロッとした食感になります。

旨みのもとは豚の脂(ラード)と豚肉。これらを炒めて生姜を加え、長茄子を手でポキポキと折りながら鍋に入れたら、醤油、水を入れ、蓋をして10分煮ればトロトロの茄子の煮込みのできあがり。

油燜茄子(茄子のとろ火煮込み)

シンプルで箸休めにぴったりなのが「農家四季豆(インゲンの農家風)」。インゲンの表面がシボシボになるまで強火で炒める干煸(ガンピェン)の技法ですね。こういった野菜料理はすべてラードで炒めています。

農家四季豆(インゲンの農家風)

同じく野菜料理でほっとするのが「雪菜焼白瓜(雪菜の漬物と白瓜の煮込み)」。この界隈の野菜料理は塩豚を炒めて脂を出し、その脂で野菜を炒めるのが基本。汁気のある煮込み料理でも、スープはほぼ全くといっていいほど使いません。

この一皿は、そこに雪菜独特の漬物の旨みが加わった料理で、強火で炊いて水と油を乳化させて仕上げます。

雪菜焼白瓜(雪菜の漬物と白瓜の煮込み)

さて、お待たせしました! 絞めた雌鶏で作った「ビール鶏」こと「生炒土鶏」です。地ビールを1本注ぎ、汁がなくなるまで煮切った一品。鶏はもちろん骨ごとぶつ切り。醤油と、ほんのり甘味のあるシンプルな味付けです。

生炒土鶏(ビール鶏)

最後に「笋干老鴨湯(アヒルと干し筍のスープ)」です。これはあらかじめ仕込み置きしてあって、煮た状態で土鍋ごと冷凍されており、注文が入ったらカセットコンロで炊いて提供します。

中国のスープ料理というと化学調味料が気になる方もいるかもしれませんが、この店は基本的に使いません。老板はオイスターソースなども使うのは嫌だとか。

笋干老鴨湯(アヒルと干し筍のスープ)

どれも素朴ながら、天台らしいシンプルな料理です。これが、なにも難しいところはない料理ばかりなのに、僕らが作るとこの味が出ないんですよね。

天台名物番外編!済公と天台式お焼き「菜干餅」

山にある農家楽を出て麓まで下りてくると、今回ご紹介した干し筍の「笋茄」が買えたり、天台の小吃も楽しめます。タケノコ同様、よく見かけるのが、済公の人形。

山の麓の小吃店兼土産物屋。ここにも済公がいます。ちょっと違いますが、店先にいる仙台四郎的な存在かも。

済公は南宋時代の僧侶で、酒を飲んでは肉も魚も食べまくり、飲む打つ買うと三拍子揃った破戒坊主です。それがのちに物語の主人公となり、今では民間信仰の対象に。この界隈ではかなりの人気者で、あちこちで像を見かけます。

小吃は、菜干餅(ツァイガンビン)というお焼きのようなものが人気。写真は「天台老頑童」の菜干餅で、小麦粉の生地の中に干し野菜を入れ、窯で焼き上げています。素朴なおやつですね。

さらにこの界隈は鮎が名物。中国では香魚といって、このあたりでもよく焼いて食べられます。きれいな渓流のある山の恵みは、日本も中国も変わりませんね。

そんなところで、今回はここまで。次回は車で金華ハムの工場に行ってきた話をしたいと思います。


PHOTO:山口祐介
聞き手:サトタカ(佐藤貴子)