青生唐辛子の存在感!ご飯がすすむ家常菜・辣椒炒肉(唐辛子と豚三枚肉の醤油炒め)

湖南省の家庭料理と言えば、真っ先に名が挙がる辣椒炒肉。

本場の湖南料理とはどういうものなのか。そのイメージを掴むには、ありふれた家常菜(家庭料理)を食べるのが一番だろう。そう考えていた僕が狙いを定めたのが、辣椒炒肉だ。

その名の通り、唐辛子(辣椒)と肉を炒めるだけの単純な料理だ。中国で単に「肉」と言えば基本的に豚肉のことで、この料理の場合、豚の三枚肉の薄切りを用いる。湖南人の家庭ならこの料理を作らぬところなど一つもなく、湖南料理のレストランならこの料理を出さぬところは一つもない。そう言われるほど、湖南省では普遍的な料理だそうだ。

唐辛子と肉を炒めるのだから、そりゃ辛いのだろう。何だかんだ言って、やはり激辛こそが湖南料理の基本なのかな。そんなことを思いつつ、店名に「辣椒炒肉」の名を冠した地元の人気店を訪ねた。体育館のように広い店内は地元民らしき客で埋まり、見た限り、全ての客が辣椒炒肉を頼んでいる。

看板料理の辣椒炒肉が、目の前にドンと置かれた。真っ赤な一皿を想像していたが、まず目に飛び込んできたのは緑色。丸ごと入った生唐辛子の緑色だ。しかも、その唐辛子は万願寺唐辛子並みに大きくて、量も豚肉と同じくらい入っている。唐辛子が完全に主役の一つとして扱われているではないか。

唐辛子と肉はほぼ同量。体積だと唐辛子の方が大きいかもしれない。

生唐辛子を丸ごと炒めて食べるところは、さすが湖南と言うべきか。しかも、唐辛子の種が料理全体に散らばっているということは、その辛味が全て料理に回っているということだ。

これはとんでもない辛さだよな。内心おののきながら箸を付けた僕だったが、一口食べて、狐につままれたような顔になった。何故って、辛いことは辛いが、死ぬほど辛いわけでもなかったからだ。むしろ印象的なのは、たっぷりの油が生むコクと、甘さを伴った濃いめのこっくりした醤油味だったのだ。

このどっしりした味わいで口の中が満たされた後、じんわりと辛さが広がってくる。ビールをぐいーっとあおるのもいいが、それよりも激しくご飯を呼ぶ味で、酒飲みの僕にしては珍しくご飯をガシガシ食べた。

ご飯と言えば、長沙では注文しなくても勝手にご飯を出してくる店が多い。しかも、大きな平皿か洗面器みたいな容器に絶対に食べ切れない量が盛られてくる。こっくりした味付けは、ご飯をたくさん食べることが前提なのだろう。

湖南省のご飯は長粒米で、見た目はくっついているのに食べるとパサついているので、日本米を至上とする価値観だと評価が低くなりそうだが、香りがとてもよく、料理の油分や汁が染み込むと、妙に美味しく感じられた。

どさっと供されるご飯。思わずたっぷり食べてしまう。

面白いことに、「油のコクが豊かで、甘味のある濃いめの醤油味」、「辛いことは辛いが、そこまで辛くはない」といった辣椒炒肉から受けた印象は、僕が長沙で食べた他の湖南料理にも、ほとんどそのまま当てはめることができた。冒頭で湖南料理を一文字で表すなら「辣」と書いたが、あと数文字許されるなら、「油」「醤油」「ちょい甘」といった文字を加えたい。

誤解を避けるために蛇足を承知で書くと、もしこの料理を日本で出したら、「死ぬほど辛い」と口コミに書かれると思う。「そこまで辛くはない」というのは、あくまで「他にも辛い料理体系がたくさんある中国において、最も辛い料理体系のひとつとされている割には」という注釈付きでの感想だと書き添えておく。

更に蛇足を重ねて、最後に蛇料理の話をしよう。湖南省は蛇料理も有名なのだ。それまでの食事で「長沙の辛さ、恐れるに足らず」と高をくくっていた僕は、とある蛇料理専門店で青椒帯皮蛇(青唐辛子と蛇の炒め煮)を食べ、ひっくり返ることになった。

青椒帯皮蛇(青唐辛子と蛇の炒め煮)。テラテラと輝く皮にそそられる。

驚くほど力強い食感と上品な味わいを兼ね備える蛇は、僕の好物。試しにガブリと噛り付いたところ・・・・・・辛っ!!!!!!!!!!!!!!

思わず咳き込んで、一体これはなんの辛さなんだと一緒に煮込まれた青唐辛子を口に放り込んだ僕は、更に強い辛味に襲われて、悲鳴を上げた。この青唐辛子は、辛さが辣椒炒肉のものより何倍も強い別の品種だったのだ。

ビールをあおっても辛い。ご飯を食べても辛い。辛さを癒す術がどこにもない。いやホント冗談じゃないよなんだこりゃ辛いよ辛すぎるよ身体が震えるほどの辛さだYO!!…あまりの辛さに僕は思考もまとまらず、朦朧とした。

それでも次から次に蛇に手が伸びてしまったのは、蛇自体がとても美味しかったからだが、この辛さこそは旅行前に本場の湖南料理に対してイメージしていた通りの、水爆級の辛さであった。

他の店で経験したものより遥かに激しかったこの辛さを、どう受け止めたら良いのだろう。今も湖南料理の激辛化は進行していて、その急先鋒に出会ったと考えればいいのだろうか。なんとなく掴んだつもりだった湖南料理の実像は、辛さの爆風に吹き飛ばされて、粉塵の向こうに消えていったのだった。

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