ご当地おやつ&朝食は欠かせない!海蛎餅・さつまいも団子・鍋辺は福建のソウルフード

中国の旅といえば、地元で親しまれているおやつも外せません。今回訪れた『阿玉海蛎餅』は、福建を代表する小吃(軽食)の専門店です。

『阿玉海蛎餅』外観。

ここで食べられるのは、店名にも掲げている海蛎餅(ハイリービン:hǎilìbǐng:牡蠣入り揚げ餅)に加えて、番蔗丸(ファンシュワン:fānshǔwán:さつまいも団子)、鍋辺(グゥオビェン:guōbiān:米粉の幅広麺入りスープ)、滑粉(フゥアーフェン:huáfěn:幅広米粉麺と発酵筍入りスープ)など。夜食に食べに来てみたら、現場でいろいろ教えてもらうことができました。

さまざまな福建小吃が繰り出されるコンパクトな厨房。

UFO型の牡蠣入り揚げ饅頭。海蛎餅(ハイリービン)の作り方

店名にもなっている海蛎餅は、牡蠣と海苔がたっぷり入った福建らしい揚げもの。フカッとした食感と、うまみたっぷりの餡が後を引く味わいです。何よりお玉をひっくり返したような真ん丸のビジュアルが目を引きますよね。

海蛎餅。

さっそく作り方を見せてもらうと、生地は小麦粉ではなく、浸水した大豆と米とピーナッツを挽いたもの。

その生地をお玉の上に流し入れ、牡蠣、海苔、キャベツなどを混ぜた具に豚肉をのせ、上から再び生地を流してふたをしたら、油でこんがりと揚げてできあがりです。牡蠣、海苔、キャベツ、豚肉はマストですが、具は店によって違いがあるようです。

とろりとした質感の生地は、大豆と米が主体。
下味をつけた豚肉をオン。
具をたっぷり乗せたら、スプーンで生地をかけて全体を覆います。
油でじっくり揚げて仕上げます。左が海蛎餅、右は揚げたての胡麻団子。

これを見て思い出すのは、エビまたは大根でつくる上海の油墩子(ヨウドゥンズ|yóudūnzǐ)や、大根、豆腐、葱でつくる浙江省台州市仙居の油圓(ヨウユェン|yóuyuán|油圆)。ところ変われば材料も変わりますが、各地に似たような揚げものがあるのはおもしろい共通点です。

ほの甘さが後を引く!さつまいも団子・番薯丸(ファンシュワン)

番薯丸(ファンシュワン:fānshǔwán)も福建ではおなじみの小吃です。これは、直訳するとさつまいも団子という意味に。

しかし、団子といっても日本のように甘い菓子ではありません。豚肉と海苔を練った、あっさりとした塩味の餡を、さつまいものほのかな甘みのある生地で包んでおり、食感は白玉団子のようにもちもち。これはいくらでも食べられますね!

蒸したさつまいもに、さつまいも粉を加えた生地に餡を包みます。オレンジ色は福建のさつまいも由来。
豚肉と海苔を入れて練った餡。うまみたっぷり。
ゴルフボールくらいの大きさに整えて、蒸したりゆでたりして食べます。
蒸したての番蔗丸(さつまいも団子)。スープに入れて食べることもあります。

福建人のソウルフード・鍋辺(米の幅広麺)は朝ごはんの定番

鍋辺(グゥオビェン:guōbiān)は、米で作った幅広麺のような食べもので、これもまた福建人のソウルフードのひとつ。鍋の辺と書く通り、中華鍋に糊状にした米を貼り付け、熱し固めたもので、スープを加えて朝ごはんなどにするようです。

鍋辺の生地。滑らかなテクスチャーです。
熱した鍋肌に生地を回しかけます。
蓋をして加熱。
蓋を開けると、糊状だったお米のペーストが薄く乾いたシート状になっています。半透明になっていれば火が通った証拠。
ヘラで剥がして、エビやアサリなどの海鮮と大根などを入れたスープに落とし、サッと煮てできあがり。

すると、福建出身のスタッフが「鍋辺は福建の朝ごはんの定番です。おいしいから明日の朝食べに来ましょうよ」と言うじゃありませんか。ならば、作り方のレクチャーを聞きながら、翌朝にとっておくのも楽しみが増えるというもの。

そして翌日。満を持して食べに来た僕たちは、思わず顔を見合わせました。広東省、河北省、日本人(僕)の全員が「味が薄いっ…!」。調理法はもちろん、味付けも含めて、食文化はそれぞれですね。想定外の味わいも含めて、旅の醍醐味を味わいました。

さて、鍋辺で福建らしい朝ごはんを楽しんだ後は、いよいよ今回の旅の本丸『聚春園』へ向かいます。ここは中国が誇る超高級蒸しスープ・佛跳墙(ぶっちょうしょう|fótiàoqiáng)発祥の店。この店で佛跳墙を食べずして、天台に帰るわけにはいきません。乞うご期待!

次回予告>聖地巡礼!中国の超高級蒸しスープ「佛跳墙(ぶっちょうしょう)」発祥の店『聚春園』に行ってきた|山口祐介の江南食巡り⑦


語り・写真:山口祐介
聞き手:サトタカ(佐藤貴子)