ウイグル族のソウルフード!抓飯(抓饭/ポロ/ウイグル式ピラフ)と拌麺(拌面/ラグメン/ウイグル式ぶっかけうどん)

抓飯(ヂュアファン)と拌麺(バンミィェン)は、いずれもウイグル族のソウルフードだ。トルファンで出会ったウイグル族の青年の言葉を信じるなら、彼らの昼飯は「基本的に抓飯か拌麺の繰り返し」だそうだ。どちらも日常的に外食するが、同時に家庭料理の定番でもあるという。

青年曰く「世界で最も旨いものは、ママが作った抓飯と拌麺」とのこと。彼の未来の結婚相手は苦労しそうである。ともあれ、僕としてもどちらか1つを選べなかったので、両方紹介することにした。

まずは、抓飯。「手づかみ飯」という意味で、元々は食べ方に由来した名前なのだが、今では地元民でもスプーンや箸で食べる人が多い。ウイグル語では、ポロと呼ばれる。手づかみで食べると、ご飯がポロポロ落ちるからである…というのは全くの嘘で、その語源はトルコのピラウ(ピラフ)だ。作り方も似ている。

抓飯(ポロ)。冒頭の青年が、「ママが作るポロの次に旨い」と評した店にて(笑)。

大量の羊の油で羊肉を揚げるように炒め、玉葱とにんじんを炒め合わせる。野菜が軟らかくなったら、浸水させた米と水を足して、蓋をして炊く。にんじんは、普通のにんじんと新疆特産の黄色の2種を使うことが多い。さらに干し葡萄やひよこ豆を入れることもある。クミンなど香辛料を加える店もあるが、本来の味付けは塩だけのようだ。

炊き上がった抓飯は、米粒がピンと立ってポロポロしている。2種のにんじんが彩りを添え、食欲をそそる。羊肉の旨味や玉葱、にんじんの甘味が染みたご飯が、実に旨い。店によっては油がキツイこともあるが、美味しい店の抓飯はどんぶりでもお代わりできそうなくらい軽やかで、いくらでも食べられる。

ゴロゴロ入った羊肉は、香ばしさと柔らかさを併せ持ち、正しくご馳走だ。「ビ、ビール!」という心の叫びを無視できなかった僕は、近くの店で買ったビールを持ち込ませてもらった。店に酒は置いていなくても、持ち込みならOKという寛容な店がトルファンには多いので、酒好きの諸氏は臆せずに交渉してみよう。

ビールさえあれば、ニンジンの漬物も肴になる!容器は、お茶用の茶碗を拝借。

お次は拌麺(バンミィェン)。肉野菜炒めのぶっかけうどんだ。拌麺は“和え麺”という意味で、炒め物と麺をよく混ぜて食べる。ウイグル語ではラグメン(ラグマン)。中央アジア全域で似たものが食べられているので、ご存知の方も多いかと思う。

拌麺(ラグメン)。たっぷりの野菜と肉と主食を一度にとれる完全食だ。
つるつるしなやか。うどんのような麺。

「中国の麺はコシがない」などと言われるが、拌麺の麺は違う。しなやかで、コシがあり、喉越しがいい上に、むっちりとした歯応えも楽しめる。いわゆる手延べうどんなのだが、作り方が面白いので、写真でご覧頂こう。

まず、小麦粉を練った生地に油を塗って細く延ばし、蛇のようにとぐろを巻かせて、寝かせる。独特のコシはここで生まれる。

寝かした生地を更に延ばして麺にする作業は、魔法のようだ。僕が見たときは、ウイグル族一家の女性3人が総がかりで作ってくれたのだが、ある者は生地をまな板に押し付けて延ばし、ある者はそれを手で引っ張って延ばし、ある者はそれを両腕に巻き付けて、まるで毛糸玉を作るかのようにして延ばしていく。見事な連携プレイだった。

とぐろに巻かれた生地。
あれよあれよと言う間に、生地が延びて麺になっていく。
最後は両腕に巻き付けながら延ばしていき、そのまま湯を沸かした鍋の中にドボン。

麺をゆでる間に、炒め物を作る。具は、羊肉とトマトがメインで、あとはセロリ・茄子・ピーマン・葱・玉葱・ジャガイモ・インゲン・白菜などの野菜を何種類か入れるのが普通だ。全ての具をたっぷりの油で炒めて、塩で味を付ける。それを茹で上がった麺にどさっとかければ、できあがり。

完成!地味な見た目だが、これが今のところ人生で一番美味しかった拌麺。

さあ、いただきます! 具と麺を混ぜると、油が媒介となって、炒め物の旨味が麺にしっかりとからみつく。つややかな麺をほおばると、肉と野菜の香りや旨味が口の中で弾ける。

羊肉は当然旨いし、トマト・玉葱・茄子の甘味もすごい。ピーマン・セロリ・インゲンの歯応えがリズムを刻み、箸が止まらなくなる。味が濃い新疆の食材だからこそ、シンプルな味付けが活きるのだなあ。これならば、毎日のように食べても食べ飽きないのも分かる。

ところどころ太さが異なる麺。家庭料理らしい仕上がりだが、食感に起伏ができて旨い!

最後に余談。抓飯や拌麺を食べるときは、必ず羊肉串(羊肉の串焼き)を一緒に頼もう。有名過ぎるし、見たままの料理なので、今回3つの料理には選ばなかったが、新疆のローカル店で食べる羊肉串はとにかく絶品なのだ。

定番中の定番・羊肉串。これを食べねば新疆に行ったことにはならない。

ビールと共にガシガシ羊肉串を喰らってから、主食の抓飯か拌麺に進む。それが、禁酒の教えすら守れぬ愚かな異教徒にとっての、正しい新疆の愉しみ方である。

≫次の連載:中国のハワイ・海南島で南方の食を満喫!海口市で食べるべき料理3選(11月20日更新!)